191201 神奈川
- 光太郎 笠原

- 2020年1月7日
- 読了時間: 8分
更新日:2020年7月24日

湘南国際マラソンに出てきた。そこで出せました、ぶっちぎりのパーソナルベスト、2:57:33(ネットタイム)。初めて念願のサブ3達成ができた、その一日の話だ。
前日から小田原の実家に帰り宿泊。朝4時台に起きるのはいつも通りだ。朝食は昨日の夜も食べた母親が作ったクリームシチューと自分がお土産に買って帰った浅草「ペリカン」の食パンのトースト。日中の食料用に、チョコレートとふかし芋を外出するときに持っていった。
朝の移動は楽だ。ガラガラの東海道線で2駅行けば二宮に着く。駅からのシャトルバスは早い時間であればスムーズに乗れる。会場には7時前に着けた。いつもこの大会の時はプールセンターっていう室内の暖房が効いた部屋でレース前を過ごすことにしている。スタートまで2時間近くあったから、本読んで過ごした。この余裕もてたのはよかった。静かないいレース前だ。
Aブロックスタートだったんで、早めにスタート地点へ移動したつもりだったけど、20分前には早くも前がつまるほど混んでて、人をかき分けて進まないとAまでは行けない状況。なんとか前へ進んでいって、それなりの場所を確保できた感じだ。天気予報では曇りだったし、確かに雲はあったけれど、日差しは遮られることなく受ける感じ。ただ思ったよりは気温が低くてそれは助かった。±0でいいコンディションだったように思う。
スタートの号砲から1分足らずで自分もスタート、Aブロックだから周りも飛ばすかと思ってたけど、そこは参加者15,000人の大会、遅い人も速い人も入り混じってるから、ゴチャゴチャはしてる。人をかき分けながら走ったけど、4:40ぐらいの入りだった。
これはゆっくりすぎると、次の1kmから4:10台にあげた。そのままなだらかにペースを上げていって、5~8km辺りで今日一番のペースで走ってた。ちょうど4:00フラットくらいのペースだ。今日の体のコンディションとしては、決して「調子いいぞ」って感じではなかった。レース前にはふくらはぎに張りがあったし、この辺りでは右足首に違和感があった。さらに少し先では脇腹あたりも痛かったし、気分良く走れたところは長くない。それでもどの不調にも冷静に対処できたのがよかった。足首の痛みは「そのうち和らぐだろう」っていう余裕を持ちつつ走ってたら、実際にそうなった。脇腹の痛みは、水分と栄養の補給、さらにはレース中の呼吸の調整でやり過ごせた。この落ち着きって、多分レースでの経験と夏場からの練習量の裏打ちがあったからこそ、手に入れる事ができたものだと思ってる。この確実性が、マラソン競技の魅力でもあり、自分が好きな要素だ。
10kmくらいのところで大集団と合流。これがサブ3のペースランナーと走ってる集団で、しばらくはこれについて併走。その時までほぼ時計を見ず、自分なりの感覚で走っていたんだけど、ついて走るのがすごくラクなペースだなって感覚を持てた。「これならサブ3ペースでしばらくいける」っていう自信を持てたのもそのあたりだ。その集団にずっとついててもよかったけど、かなり人が多くて走りづらいところもあったんで、前に出て走ることにした。サブ3ラインより前には初めて来た。人がバラけてて少ないなっていう印象。そこを苦もなく快走できてるんだから、「自分も速くなったもんだな」って感慨がある。
公志くん(義兄)が応援に来てくれた。16km過ぎのマックがあるところに差し入れ持って立っててくれた。その辺ではすでに人がバラけたところにいて単独で走ってたんで、すぐにお互いの姿が確認できた。「光ちゃん、がんばれ!サブ3、行けるよ。」って大声で声かけてくれたのが聞こえた。すごく嬉しい瞬間だ。差し入れで貰ったのは「スポーツようかん」。ようかんではあるんだけど、パッケージに工夫がされていて、走りながらでも食べられる形状の補給食。ココア味で、味も悪くない。いいアイテムだ。公志くんは折り返したあとも同じ場所に残っててくれて、道の反対側から声援送ってくれた。感謝だ。
さてレースの方は20kmを過ぎて、いよいよ復路にさしかかったところ。実はこの辺では決して調子が良くなくて、先月ぐんまマラソンで感じてたような「余裕」がない。まだペースこそ落ちてないものの「こりゃ最後まで持たねえな」の感覚が色濃くあった。今までのフルマラソンで常に感じてたこの悪い予感、だいたいその後その感覚通りに落ちていくもんなんだけど、結果的に言えば、ほぼペース落とさず後半も走り切った。
20~30kmまでは、ほぼ4:10前後で走れてる。ひとつはシューズが良かったことはあるだろう。ズームフライ3は本当に素晴らしい。勝手に足が前に運ばれていくような感覚がある。今までと同じ負荷で走っていても、今までよりも遥かにペースが速い。特に後半は、この感覚に助けられた。もうひとつは精神的な成長もあると思う。あると信じている。「持たねえな」の気持ちに負けず、気持ちを持ち直して走り続けた。我ながらタフになったなと自負している。もちろん体力がともなってた事が前提にあるとは思うけどね。コースを知っていたこともプラスになった。湘南国際のコースはほぼフラットだ。ただし微妙なアップダウンがある。はじめて走った時にはこの微妙な起伏にやられた。後半の上りの箇所では、明らかにペースが落ちて、歩いたような記憶もある。ただ全コースを通して言えることは、上りだけで終わるところはなくて、必ず下りが近くに来るようなコース設計になっている。「上りで抑えて、下りで飛ばす」これを常に意識して走れたことがよかった。
30kmを過ぎるとややペースが落ちてる。それでも4:10~20の間。給水で5秒くらいペースが落ちるけど、その直後には戻せてる。37km過ぎて、スタートの大磯プリンスホテルを過ぎた辺りで、具体的にサブ3を意識した。「持たねえな」の気持ちを完全に払拭、「持たせるぞ」の気持ちだ。相変わらず時計は見てなかったけど、サブ3のペースランナーより先にいることだけはわかってたんで、このペースを続けようと考えてた。
ところが最後の折り返しで、うっかり時計が目に入っちゃった。「2時間47分」台だ。思わず頭の中で計算。「あと2.5kmを13分か。」その時点では、自分がどんなペースで走ってるのかわかんないんで、このままでいいのか、それとも少しあげるべきかがわからず、気が急いた。しかも給水所でスピード落とした時に、両足の腿裏が軽く吊った。「いやあ、終わったなあ」って感じもあったけど、屈伸してなんとか応急対応。レースには戻れた。レース後の話になるけれど、今回の吊りかたはヒドかった。階段登ろうとしたら、今まで経験したことない「全身いたるところが吊る」っていう状態に。その場で悶絶して苦しんでたら、係員の方が声かけてくれて、なんとか正気を取り戻したような有様だった。結局10分くらい動けず、姿勢も変えられず、安静に。あれはつらかった。多分圧倒的に水分が足りてなくて、脱水状態だったんだろう。それくらいヒドいコンディションだったんだけど、レース中はなんとか持ってくれた感じだ。
それにしても最後の2kmはしんどかった。ホントに死にものぐるいで走った。アドレナリン出てる状態っていうのは、ああいうことをいうんだろう。それを実感できたのは貴重な経験だ。その時に頭にあったのは、最近見た「ロッキー」のシーン。ロッキーがエイドリアンに「オレはゴロツキなんかじゃない。リングの上で最後のゴングを聞いたとき、オレはそのことを証明できるんだ。」って宣言。ロッキーはそれを実現する。そして、気持ち昂る例のBGMが流れ、「エイドリアーン!」て叫ぶ有名なラストシーンを迎える。自分も「サブ3を実現してゴールラインを越えたときに、ただのボンクラじゃないことを証明するんだ」っていう強い気持ちが湧いてきた。
思えばこれまで「これを成し遂げた!」っていう誇らしいキャリアが自分にはない。今日サブ3を達成することで、はじめて自分が誇れる大きな勲章を手にできると思って必死に走った。走りながら、「ああ」とか「よし」とか、声出して、ピッチをあげた。そう、なんとその苦しい状況でペースを上げられている。再び4:00台に戻ってるんだから大したもんだ。人間の体力ってすごいんだなって、客観的に見てそう思う。だってホントに苦しかったから。
最後のプリンスホテル前の坂を駆け上がって栄光のゴールへ。「2時間58分」ていう表示が見えて、気持ちがぱあっと明るくなった。ゴールの瞬間、こんなに気持ちいいことはない。初マラソンのゴールも気持ち良かったけど、それ以上だったかもしれない。うん、時間が経ってるから比べられるもんじゃない。とにかくその瞬間は「最高に」気分が良かった。ゴールのあと写真撮ってくれるカメラマンに、指3本立てるポーズとった。「サブ3できたらこのポーズしよう」ってずっと思い描いてたから、それが実際にできたのは大きな喜びだ。

マラソンはじめて数年経つ。その間に目標は「完走」「サブ4「サブ3.5」と進んでいったけど、そこまでストイックな努力は必要なく来れた感じだった。ただ今回の「サブ3」達成には、とても多くの努力を要した。半年以上、月間300km以上のランニングを続けた。ほぼ毎日朝4時台に起きて走った。夜はほとんど予定を入れず、退社後はまっすぐ家に帰って、9時台には寝た。暑い日も、寒い日も、雨の日も途絶えさせなかった。
食事も気を遣った。本で知識を得て、自分なりにできる範囲で実践した。糖質に頼らないエネルギーの消費ができるように、起きてから何も食べずにランニングするようにした。糖質自体の摂取量も制限した。甘いものは控えて、魚を食べる回数も増やした。
まあ色々とやったもんだ。だいぶ生活リズムも体質も変わったと思う。それが報われたっていうのが嬉しいところ。そして自分がその生活をすごく気に入ってるところも、また嬉しいところだ。過程も結果も伴った記録達成なんで、そこで得られる達成感は特別なものだ。
レースの結果を報告して、みんなから祝福してもらえた。同じ大会に出ていた、保田さん、田島さん。ランネットで記録を見てくれた村田さん、石田さん。応援にきてくれた公志くんをはじめ、家族からも。自分自身へのお祝いはささやかだ。出店ブースで買った湘南こっこ唐揚げと牛すじが入った焼きそば。なんだかすごくおいしかった。こんなんで十分なんだから、安上がりでいい。とにかく気持ちいいレース後だったっていうこと。
大事なことは、生活にせよ、食事にせよ、トレーニングにせよ、これからも続けることだ。このレベルを「定常」とすることは、とても努力がいることだし、意義のあることだ。それを今後の目標にやっていこうと思ってる。
第14回 湘南国際マラソン 距離42.195km 時間2:57:33 191位/14,179人中




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