241013 東京
- 光太郎 笠原
- 2024年10月26日
- 読了時間: 8分
今年の夏の暑さはヒドかった。年々暑さが増しているけど、今年は猛暑日が当たり前っていう感覚。運よく猛暑日にならなければ「今日は走りやすいな」って思うほど連日暑かった。
もともと夏のランは苦手としていた。例年、朝3時からの2時間ランでなんとか日差しが強くなる前に距離を稼いでいた。今年は朝5時から通勤前に10km、夕方18時に帰宅後に10kmというサイクルにした。朝5時はもうそこそこ暑くなってるからキツい。そして夕方のランはよりキツい。ピーク時には35℃近い気温の中で走ってた。1時間がいいところだ。それでも耐性はできてくるもので、夏の後半はその状況にも適応してきた感じがする。
ここ数年「必ず月に一度はフルマラソン以上の距離を走る」という自分ルールを定めてやってきている。フルマラソンの大会のない月は自分ルートで42.195km以上を走る。
5月に稲毛で大会に出たあとは、6月多摩湖、7月三鷹、8月彩湖と走ってきた。走る一週間くらい前からコースを考えて、前日早めに寝て、当日は朝3時起床、ほぼ空腹のまま夜明け前の街に繰り出すっていうスタイルだ。そのプロセスを踏んでいくときがとてもワクワクする。
6月の多摩湖は、迷走しつつもなんとか行き着いた感じだ。まずは東村山駅まで行って、志村けんの銅像を拝みにいく。そこでちょうどハーフマラソンの距離に達してたから、引き返す選択肢もあったけど、その先まで行ってみた。西に3kmくらい進むと多摩湖に行きつく。結果的にこの選択はよかったように思う。多摩湖は人口の貯水湖。奥にはベルーナドーム(西武ドーム)と狭山湖が見える。遊歩道がとてもよかった。ダムの堤防沿いに伸びた歩道で、地元の方々が朝早くから思い思いに通っていた。高台の上から狭山丘陵が見渡せる。とても気持ちのいい眺望だった。その日は結局50kmのランになった。これだけ走ったのは久しぶりだ。
7月は三鷹の味の素スタジアムまで行く。国立天文台の前も通ったんだけど、中には入れず。行きは玉川上水、帰りは井の頭公園付近を通った。多摩地区の中でも特に平坦な場所で走りやすい。梅雨時期だから雲が日差しを遮ってくれる。この時期まではまだ常識の範囲内の暑さだ。

暑さのピークは8月。月の後半まで涼しくなるタイミングをはかったけど、結局熱帯夜からは抜けられず、覚悟を決めて8月25日にフルを走る。
例のごとく朝3時に家をスタートし、まず彩湖まで向かう。そこまでだいたい15kmくらい。その時点ですでに着ている服が重くなるほど全身に汗をかいていた。彩湖の周りを1周半くらいして、びしょびしょの状態で近くのローソンに入りツナとタマゴのサンドイッチを食べる。そういう朝食も嫌いじゃない。その後、長い長い秋ヶ瀬橋を渡って志木方面に抜ける。南へ折り返して新河岸川と柳瀬川を越え、新座の方へ進む。最終の目的地は東久留米のスパジアムジャポンだ。最近何度か行った日帰り温泉施設。真夏のフルを走った後に温泉で汗を流す。なかなか気持ちのよい朝が過ごせた。
直近の9月に走ったのが豊洲方面だ。台東区に住んでいたころ毎週のように通っていた豊洲ぐるり公園までの道のりを走ってみる。皇居外苑を抜け、築地、月島、晴海と通って、豊洲へ行きつく。この道は結構好きだ。よく通っていたのは土曜日の朝。ここを走ると週末が始まるっていう気分になって、気持ちが昂ったもんだ。同じ場所を走るとその時の感情が蘇る。この日もかなり暑く、相当消耗したけど、疲労感より爽快感の方が大きいランだった。
10月の大会はこの豊洲ぐるり公園を周回するフルマラソンだ。
「TOKYO千客萬来マラソン」稲毛でもお世話になったアースランクラブ主催の大会。以前にもここで大会はおこなっていたようだけど、近くにできた商業施設の冠名がついて第一回目の大会だそうだ。
稲毛の時と同様、3.014km×14周のコース。公園のテラスコースを走っていく。豊洲市場の西側のへりの部分を走る。もともと眺望のいい公園だけど、その中でも特に開けた場所。正面に見えるレインボーブリッジのスケールは圧巻だ。よく夜明け前か夜明け直後に走っていたから、昼時の太陽が燦々と照らす時間に走るのは初めて。いつも以上に壮観に見えた。もちろんそこを占有できるわけではなく、道をあけながら小型の三角コーンで区切られたコースの中だけを走るスタイル。それなりに道は広いし、ランナーの数も多くないから、そこまで窮屈な感じはしない。
シーズンの緒戦で、しかも最高気温25℃を超えるような暑いレース。まだ全力を出す条件が揃っていない。1kmを4:30くらいのペースで進んで、3時間10分切るくらいのトータルタイムでゴールするのが、今回のおおまかなイメージだった。
と言いつつ例によって入りは早くなる。はじめの1kmは4:05くらい。ちょっと早すぎ。次の1kmを4:20くらいに落とす。これなら無理はない。あとはそれをキープする感覚で走った。そのペースで走れば、この大会では無双の速さだ。普通に走っていければトップ取れるっていう感触があった。
折り返し多いからフルのゼッケンの人とは何度も顔を合わせる。表情を確認すると、みんな余裕があるのは4~5周目くらいまで。中間くらいになると一様に辛い表情になってくる。それを見て自分がいかに余裕もって走れているかを実感できる。
フルを走っていて感じることは「楽に走ってる人にはかなわない」ということ。大会で走っていると、もちろん自分より速いランナーを見かけるけれど、大きく分けて二つのパターンがある。一生懸命走っている人と、そうでない人だ。
体に負荷をかけず、最小限の出力で、スーッとペースアップして走り抜けていくランナーがいる。そういうの見てると「あの人には追いつかない」って気持ちになる。逆に一生懸命走っている人は、「そのうち落ちてくるだろうな」と思って見ていられる。案の定しばらくすると抜き返せる事がほとんどだ。たまにがんばって一度抜かれても抜き返す人がいるけど、長い道のりの中でがんばるパートがあっても、全体通して余裕持ってる人にはいつか抜かれる運命にある。フルで無理にペースアップすることは禁物。リラックスして余裕持って走ることを心がければ、自然とタイムがともなってくる。何よりその方が走っていて楽しい。楽しく走ってこそのマラソン競技だ。
そんな訳で快調に進み、「調子悪くないな」と思いつつ、中盤から終盤に入っていく。どんどん気温上がっていって、さすがにペースを上げることは難しくなる。ハーフの通過が1時間31分台。その後はキロ10秒くらいは落ちていって、4分台中盤くらいになる。これ以上落ちないように踏ん張るってことだけ意識して後半を走った。それにしてもぐるり公園のコースはいい。周回コースの大会に慣れてきたこともあるけど、景色にまったくあきることがない。レインボーブリッジも晴海もららぽーとも遊覧船もとても優雅に見渡せた。
しおりちゃんが応援に来てくれることになっていたから、それを楽しみに最終盤を走る。歩道の方を気にしつつ走っていたから、苦しい時間帯で気を散らす材料としてとてもよかった。それにしてもなかなか見つからない。とうとう最終周に入って「もしかしたら間に合わないかも」なんて気持ちも起こり始めたけど、中間点で本部前を通過する時にようやく姿を確認できた。間に合った安堵感で気持ちも晴れやか。最後の半周はだいぶ元気取り戻し、ペース落とすことなく走れた。
3時間4分台でのゴール。5月に稲毛で走った時より早いフィニッシュタイム。このコンディションにしては十分満足できる記録だ。
今回も他のレースのスタート時間と重なってのゴールで、混沌の中でレースを終えた感じ。ゴール直後に話したスタッフは「あれっ、ゴールですか?」なんて拍子抜けする言葉をかけてきた。ただ次に来たスタッフがバスタオルを肩にかけながら「おめでとうございます!」って言ってくれたから、これはトップ取ったかなって心の中で思う。
しおりちゃんが近づいてきたんで「たぶん1位だったよ」って意気揚々と声をかけた。それでも一応確認しないと正式な順位はわからない。QRコードで速報のサイトにアクセス。すぐには反映されてなくて、しばらくするとゴールが記録されている。見づらい表でパッと見たところ判然としない。スクロールしていって「うん、これは優勝してるね」って確認する。
とてもとても地味な優勝決定の瞬間だ。
たぶん人生初の優勝経験だったけど、感動のシーンなんかではなかった。『颯爽とゴールテープを切って喜び爆発』なんて場面は訪れなかった。『疲労困憊になりながらなんとかつかんだ初優勝』ってことでもない。淡々と走り終えて、事務的な確認作業を経て、小さな声で「おっ」て発するくらい。でもそれくらいが自分らしくていいかなって思う。
終わった後の小休止。晴海側の海を見ながらベンチに座り、差し入れのクーリッシュとサンドイッチを食べる。表彰式が始まるのを待ってるんだけど、なかなか2位・3位がゴールしない。「ちょっと自分が早すぎたな」なんて軽口たたきながら待ってる時間は優越感に浸れてとても気分が良かった。
肝心の表彰式は3位の方がゴールした後もなかなかはじまらずない。そのうち会場の撤収作業がはじまる始末。しびれを切らして運営の方に「まだですか?」って聞いたら「あれっ、まだやってなかったですか」というとぼけた回答が返ってきた。再確認してもらい、ようやく表彰式をしてもらえた。
色々と拍子抜けすることが続いたけど、表彰台の一番上に立って、メダルと賞状をもらう気持ちはとてもいいもんだ。これを経験させてもらえたから、この大会には感謝したいと思う。ありがとうございました。
大会の参加者には近くの日帰り温泉「万葉倶楽部」の20%割引券がもらえたから、夫婦ふたりで行ってきた。今日走ったコースを眺めながら湯に浸かり、その後やっぱりその景色を見ながらレストランで食事する。リラックスルームで競馬見つつ、うたた寝し、日が暮れたあとは夜景まで楽しんだ。とってもいいリカバリータイムを過ごせた。
小さな規模ではあるものの、一応今回が第一回大会で、その栄えある優勝者として名を刻むことができた。うれしいのはそれが自分のとても好きなコースで行われた大会だったということ。豊洲ぐるり公園はこれからもずっと自分にとって特別な場所になるんだろうな。この大会がずっと長く続いてくれればいいなと思う。
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