231216-17 大阪・和歌山
- 光太郎 笠原
- 2024年1月4日
- 読了時間: 8分
「和歌山ジャズマラソン」に参加するため関西遠征する。2023年最後の旅だ。
まずは和歌山へ行く前に、大阪で走ってみる。
関西のランナーのメッカ、大阪城公園へ行く。朝6時出発で、品川から東海道新幹線に乗って行けば、10時前には最寄りの森ノ宮駅に着ける。ランニングステーションみたいなシャレた施設は使わず、駅の近くのコインロッカーに荷物預ける。1回200円でリーズナブル。手前を歩いている手練れのおじさんランナーも、同じ行動をしていた。地元のコアランナーのスタイルとシンクロしていたのがうれしい。前日に会社でもらった「黒松」を食べてからランをスタート。
公園内外に、ランナーのために整備されたコースがある。正規のコースを走ると一周約3km前後。外周を走ると4kmくらいの距離。皇居が約5kmだから、それを一回り小さくしたくらいの距離。違うのは、施設の真ん中に聳え立つ天守閣が、あるかないか。大阪城は色使いも派手だから、否が応でも目に入る。ものすごい存在感だ。結構アップダウンがあるところも皇居と似ている。反時計回りで走ると、西側の大手門のあたりまで緩やかに上っていき、その後、森ノ宮駅方面までは、ゆるやかに下るかたちになる。下りはスピードにも乗りやすく、すごく気持ちのいいパートだ。
コースの回り方がまちまちなところも特徴的。皇居は完全に反時計回りのランナーしかいないけど、ここでは時計回りの人も結構いる。信号ないし、道幅も広いから、走る方向が入り混じっていても危険な感じはない。むしろ対面から来るランナーと顔を突き合わせるかたちになって、表情が見れるところが面白い。会話している人が多いのも特徴だ。関西圏特有の力が抜けた雰囲気がある。リラックスして走るにはいい環境だ。
足を延ばして、北側にある大川流域の桜宮公園の方も走ってみる。こちらは川沿いのジョギングコース。ちょうど東京の隅田川沿いのテラスと似た印象のコース。大阪城公園内より人の数も少なく、ゆったりと走れる。「水都大阪」と呼ばれるくらい川沿いの整備が進んでいる町。こういうランニングコースもいたるところにあるんだろう。オフィス街や観光名所のすぐ近くに、悠々と走れる場所があるという意味では、ランナーにとってすごくいい環境なんだろうなって思う。しばらく大阪に滞在して、いろんな場所をめぐるのも楽しいだろうなと想像を膨らませる。
25kmがっつり走りこんでランは終了。心地よい疲労感はあったけど、翌日の大会を走りぬく余力も残せてる。満足感のある遠征ランだ。
ランの後、ランチ。玉造まで歩いて「極楽うどん」というお店で「鶏天鶏卵カレーうどん」を食べた。丼の上の方がかきたまで、底の方にカレーが入ったうどん。さらにトッピングで鶏のから揚げが3つ付け足された逸品。おいしい。ごちゃ混ぜ感が、自分の好きなところ。庶民的な感じもしつつ、豪華な感じも出していて、すごくバランスが面白い。ボリュームも相当あった。走ったあとのリカバリーにもぴったりだ。

店に入るまでに15分くらい待った。その間、前に並んでた土建屋さん二人組の会話がすごく頭に残ってる。
「○○さんとこに出した相見積やけど、オレははっきり○○さんにゆうたんよ。『値段のたたきあいになったら、かなわんから、相手さんには金額伝えんといてください』って。そしたら、相手さんが見積出してけえへんかってみたいで、結局ウチに仕事頼んでくれることになって…」
特にオチがあるようなネタ話ではないし、標準語で話していたら聞き流していたような内容だけど、大阪弁で流ちょうに話していると聞き入ってしまう。分別ある大人同士の会話で、ユーモアが程よく入っていて、リズムがいいと、聞いていて楽しい。待っている間も全然退屈しなかった。
その後、和歌山へ移動。夕食は、名物の和歌山ラーメン食べて、翌日に備える。「井出商店」という地元の老舗。おいしかったけど、特に心に残るほどの味でもなかった。会話のネタとして、食べられたことはよかったかなってくらいだ。
駅前の東横インに泊まる。朝食バイキングはそれなりにいい。和歌山らしく、梅とゆかりのおむすびなんかもあって、おいしい。
外に出ると、昨日までの暖かさとは一転、朝から底冷えする寒さだ。ホテルからスタート会場の和歌山城までは、徒歩で移動。はじめはくもりだったけど、そのうちあられが舞ってきた。会場着いて着ている服脱いで荷物を預けるまでは本当に億劫だった。寒さに耐えながら、お堀の奥の和歌山城を見る。12月半ばにお城の見える公園で、木枯らしのなか決戦を待つ。なんだか赤穂浪士になったような気持ちだ。
とはいえ外で待ち続けるのは辛い。スタート地点の目の前の施設を開放していた。空調が効いていて、天国のように温かい場所。みんながそこに集まって、わいわいしている。ハーフマラソンということもあり、気楽に参加している人も多いようだ。先月の大田原とは正反対で、ものすごくやかましい。関西の大会に来たなって感が強くなる。レースの直前5分前くらいまでそこでまどろんでいた。
ハーフの出場者が約2,500人。大会の少ない和歌山県の中ではそこそこの規模だろう。久しぶりにTATTAの練習ランキングで出場者中1位の走行距離だった。うれしい勲章だ。ここのところ走行距離を少し落としているから、今後はなかなか増えない勲章かもしれない。
スタートは市の中心の目抜き通りで、かなり広々としている。お城の周囲のクランクをいくつも通る序盤で、カクカク曲がりながら隊列が決まっていく。はじめの2~3kmは4:30くらいで走ってた。4kmあたりで和歌山港に出て、南下する。そのあたりからは基本的に追い風になる。身体がほぐれたこともあり、自然とペースがあがっていく。4:10台までラップがあがって、無理なく走れている感覚だったから、そのままのなりで進む。勝負レースでもないから、シューズは練習用のインフィニティランを選んだ。このシューズでも無理なくサブ3ペースに乗せられたのはうれしい収穫だ。
この大会のネーミングにもなっている「ジャズ」について。
正直レース中はまったくその楽しさを味わえなかった。おそらくスタート・ゴールの会場では大々的に催されていたんだと思うけど、そっちは覗いている余裕がなかった。コースの途中途中にバンド演奏をしている人はいる。ただ、演っているのはジャズじゃなくて、ポップスだったりロックだったり。明らかに素人っていうレベルの人もいて、それほど心に残らない。そんな中では、中年の女性数人で演奏していた「エルクンバンチェロ」がかっこよかったかな。よく甲子園の応援歌に使われている曲。すごくカッコいいし、気持ちが高揚する。それでもやっぱりジャズではない。
コースの中盤で峠のアップダウンがある。ピークの場所からは、和歌の浦の海岸線がきれいに見渡せる。朝からの曇り空もその時間は少し晴れて遠くまで見通せる。古くからの和歌に名を残す絶景の地だそうだ。しっかりと目に焼き付けられてよかった。
全体に海岸線を走るコースだから風は強い。南下する場所は追い風になるけど、結構折り返しも多いコース設計だから向かい風になるところもある。気温が低くて、そこは堪える。風に耐えながら、ペース落としてなんとか進む。
後半に入り時計を見ると、ギリギリでサブ3ペースに届かないくらいのタイム。今回は一生懸命走るつもりなかったけど、サブ3のボーダーに近いタイムで終盤に入ると、「せっかくだから記録も残しておくか」とスイッチが入る。
残り4kmからはペースをあげる。4:00を切って、3:50くらいのペース。ちょうど追い風も気持ちよく吹いてきたから、すごくスピードに乗ったことを実感できる。先行しているランナーは足も止まりかけていて、爽快に抜き去れる。へとへとになったランナーをレースの終盤で、颯爽と抜いていくのは、長距離レースの醍醐味だ。のこり2kmにあるサンブリッジは、橋自体も勇壮で、奥に見えるマリーナシティもキレイに見渡せる絶景ポイントなんだけど、走ることに集中しすぎて、景色まで楽しんでいる余裕がなかった。まあ、走ること自体を楽しんでいたからそれで十分かな。
そのマリーナシティがゴール地点。遊園地と商業施設が一体になったテーマパーク。ヨーロッパの港町をモチーフにしているんだろう。すごくオシャレな施設一体だった。サブ3ペースを、わずか10秒程度下回った1:29:49でゴール。なんとかタイム的な目標も達成できた。この11秒は気分的にすごく大きい。気持ちよく大会を終えることができる。マリーナシティはとにかく風が強い。少し日差しはあるけれど、その風のおかげで凍えるような寒さだ。会場内でたくさんイベントやっていたけど、ゆっくり見て回る余裕がない。暖を取るためにバスに乗り込んで、そのまま和歌山駅方面まで戻ってきた。スタート地点へ帰る道。ワンウェイコースだから、かなり長く感じたな。ハーフとは言え、21kmあるんだから、車で戻ってもそれなりの距離だ。和歌山駅の近くでランチした後、帰路に着く。
かなり長い移動時間だったから、読書が進んだ。
サマセット・モームの「人間の絆」を再読していた。彼の自伝的小説。幼少期から青年期を描いた長編小説の中で、さまざまな人と出会い、翻弄され、描いた夢をくじかれ、紆余曲折を経ながらも、ラストシーンではとてもとてもピュアな結末に進んでいく。その文章が美しくて、心に沁みる。
『いままでは常に「未来」を考えて生きてきて、「いま」はいつも指の間からこぼれ落ちてきた。自分の理想はなんだ。それは精巧で美しい模様を織り上げることだ。それも人生に起こる無数の無意味な出来事で。しかしごく単純な模様もいいのではないか。人が生まれ、働き、結婚し、子どもを持ち、死ぬ、これもまた完璧な模様ではないか。幸福に屈服することは敗北を認めることかもしれないが、これは幾多の勝利より得るものが多い敗北だ。』
2023年の大会出場はこれで終了。今年の大会を振り返る。
全部で10レースに出場した。フルマラソンが6、ハーフマラソンが2、ウルトラマラソンが2。そしてフルとハーフで自己ベストを更新できた。走行距離は、7,800kmで過去最長。東京からフィンランドのヘルシンキまでの長さだ。ヘルシンキオリンピックでエミール・ザトペックが、マラソンをはじめとした長距離3種目で、3つの金メダルを獲得した地だ。そしてランを初めてからの総走行距離が33,000kmを超えた。順調に走っていけば、地球一周の40,000kmも見えてきた。2024年も元気に走れる一年にしていきたい。
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