231029 茨城
- 光太郎 笠原
- 2023年11月16日
- 読了時間: 9分
6月の隠岐の島の大会が終わった後、環境が著しく変わった。
8月に引っ越し。9月に結婚した。この夏の間は、その準備やら、手続きやらで忙しい日々を過ごした。ちょうどマラソンのオフシーズンだったこともあり、大会出場はしばらくお休みする。
そんな中でも7月に軽井沢と伊香保温泉へ旅行に行き、当地で走ったりはする。特に軽井沢の朝のランは格別に気持ちいい。林道をぬって周回するコース。東京の7月とは比べ物にならないほど涼しい朝で気分が晴れやかになる。また走りたい。
毎月のノルマと課していた、月に一回のフルマラソンもなんとか継続。引っ越し直後の猛暑日が続いていた時期、彩湖に行って、無事に戻ってこれた時は、大会で完走した後と同じような感慨に浸れた。9月にフルを走った日は、30kmランをしようと出発したあと、調子がいいからとどんどん距離を延ばして、結局42km走ってた。朝ごはんのバナナ1本で、フルを走りきれる自信がついた一日だ。
そんな訳でコンディションはいい。今年に入ってからは、おおむねケガなく、痛みを抱えることなく走り続けていられたけれど、特に秋になってからは調子がいい感じだ。朝走っているとすごく気持ちいい。新居の周りでも好きなコースはいくつかできた。城北中央公園、石神井公園にはよく行く。少し足を伸ばせば、井の頭公園あたりも走行範囲だ。大通りでは、山手通りが歩道の幅が広くて走りやすい。毎日少しずつ道を開拓していく感覚は、引っ越し直後にしか味わえないうれしさだ。いまはそれを満喫している。
9月からは結婚後の同居生活がはじまる。20年以上一人暮らしを続けていたし、その環境下で10年以上ランニングもしていたから、これまでとは勝手が変わってくる。寝る時間も、起きる時間も少し遅くなった(それでも4時前には走り出してるんだけどね)。悪い変化では決してない。日々の生活は楽しいし、新たなランニングコースは刺激的だ。
ようやく生活が落ち着いて、毎日の生活リズムも定まってきたところで、大会シーズン再開。10月の大会に参加する。今回の大きな目標は、環境が変わったことで、タイムを落とさないようにするということ。是非とも結果を出したい大会だ。
今シーズン最初の大会は「水戸黄門漫遊マラソン」。今回で8回目だからまだ歴史の浅い大会だ。自分は初めて参加する。

茨城の大会には何度も参加している。霞ヶ浦と勝田でフルマラソンに出たし、北浦で100kmマラソンも完走した。県南部は、都心からのアクセスがいいし、広くて平坦な関東平野が、マラソン大会には適したコースを提供してくれるんだろう。
水戸までは近い。日帰りで往復できる距離だ。朝早かったけど、しおりちゃんに送り出せてもらえた。最近は遠征ランがほとんどだったから、家から向かう大会自体が久しぶり。それも応援込みで出発できるのは、新鮮な感覚だ。うれしい。水戸駅まで順調に進む。
水戸駅出たところにランナーのたまり場があったから、自分も加わって着替えをする。そこで偶然同僚の大都さんに会った。手を振って呼び止めて会話する。出ることは聞いていたけど、この大規模大会で、都合よく会えるとは思っていなかったから、うれしい遭遇だった。入社直後からの長い付き合いだけど、マラソン大会で会うのは初めて。不思議な感覚だ。お互いの健闘を祈ってその場で別れる。

スタートまではそこまで余裕あるスケジュールでもなかったんで、会場に着くと急いで準備。昨日、柳瀬川のパン屋さんで買ったピーナッツコッペパン食べながら、万事整えていく。スタート地点は大賑わい。水戸のメインストリートを人が埋め尽くしている。すごく道広いから、これだけの人数いても窮屈な感じはない。実際、スタート直後にはなんなくスピード上げられたし、ストレスなくレースに入ることできた。
例によって綿密なプランは立てず、前半はぼちぼちと走る。キロ4:15ペースくらいからはじまり、4分台前半までは自然にあげられた。集団走を意識して人の後ろにつくこともあるけど、じっと後ろで我慢することはなく、自分のペースを守る方を優先する。4分台を切ると後半キツくなるから、早くなりすぎないようにすることだけは意識した。
すごくフラットなコース。水戸駅周辺の要所を一通り回っていく。茨城県庁前の大通りでは、長い長いスライド(折り返しランナーとのすれ違い)がある。知り合い同士で声かけあって楽しそうな人もいれば、序盤から苦しそうな人もいる。大都さんの顔も探したけど、残念ながら見つけられなかった。ぞろぞろと続く参加者の顔見ながらいろんな想像するのが楽しい。大規模大会ならではの光景だ。
身体の調子は文句なくいい。去年の今頃はヒザのケガと付き合いながらのランだったことを思い出す。日差しの和らいだ秋の昼下がりに元気に走れることは、とても幸せなことだ。
それでも気を張らないといけないことがある。フルマラソンを走る時は、常につきまとうモチベーションの問題をクリアしていかないといけない。「何のために走るんだろう」という演繹的な問いを持ち始めると、42.195kmもの道のりを進んでいくことに疑問を持ってしまう。それを振り払いながら4分台前半ペースを維持する。沿道の応援が途絶えずにあったことが、迷いを払拭させてくれて、すごく救いになった。
20km前後で180度の折り返しがあり、またスライドの時間になる。中間点も通過するし、坂の起伏もあるから、ランナー同士のせめぎ合いが出やすい。ここで再び気分を乗せられた。20〜30kmはすごく良かった。単独走になる時間もあるけど、前からペース落ちるランナーが多く出始めるから、それを抜くことで気持ちが前向きになる。後半にさしかかったところで十分スタミナも残っていると確信し、「今日は調子がいい♪」と自信も持つ。相乗効果で走りが軽快になる。このあたりはいい循環のパートだった。これまでのフルの経験の中でも、1〜2番目に良い後半の入りだったように思う。
どの大会でも楽しみにしている給食。序盤からドリンクはまめに取っていったけど、今回はほとんど補食せずに進んできた。
30km手前のエイドであんパンを取る。走ったまま鷲掴みで取ると、手には二つ握られていた。捨てるのは気が引けるから、二つとも食べる。走りながら食べることに慣れてきたとは言え、あんパンを食べるのは難しい。
息が切れるからしっかり咀嚼ができない。ある程度のところで飲み込む。そうすると案の定ノドにつまりそうになる。食道のあたりをトントンたたきながら走ってた。運よくしばらくすると給水もあったので、水で流し込むこともできた。補食はこれで十分。あとは水分だけ取っていれば最後まで持つだろう。
33km過ぎくらいから千波湖の周回に入る。偕楽園の南東にある湖で、大きな公園内にある。周囲がランニングコースになっているから、おそらく地元のランナーは普段ここを走っているんだろう。今日は大会で占有しているから、のびのび使える。自分が知っている中では上野の不忍池に近い印象。見晴らしがよくて、走りやすい。やや紅葉もはじまっていて、すごく和やかだ。このあたりはほぼ単独走だったから、レース中ということを忘れるくらいのどかに走る。当然フラットだし、湖がそれなりに大きいから、距離が稼げる。ここを悠々と回って、公園を出ると、残り5kmとなる。
39kmから「梅香トンネル」という長いトンネルを通る。もちろん車は走っていなくて、暗闇が広がっている。それでもここがすごく印象深い。ずっとボランティアの子たちが応援をしてくれるからだ。ライブ会場の電飾のような応援グッズを持って、声援を送ってくれる。それがトンネル内で反響するんで、すごく耳に残る。ちゃんと見えないだろうに、一生懸命声かけてくれる。その気持ちに応えようと、こちらも少しでもアクション大きくして手を振ったりする。なかなか経験できない状況だった。
見たところ中高生の子が多い。水戸の中高生は本当に元気がいい。たくさんの地方、たくさんの大会に出てきたけど、ここまで元気がいい応援にはなかなか出会えない。応援に手を振って応えると、みんなキャーキャー喜んでくれる。ちょっとしたスター気分だ。いい気分を味わせてもらえて、本当に感謝だ。
トンネルを抜けると残り2kmになる。最後にコース中一番キツいであろう急坂があって、それをなんとか乗り越えると、ウイニングロードが広がる目抜き通りに出る。最後は4分20秒台に落ちたけど、それでもほとんどバテることなく走り通せたと思う。ゴール前が長い直線になっているコースは好きだ。たくさんの応援をもらいながらゴールできた。

グロスタイム 2:54:46 ネットタイム 2:54:30
自己ベストまでは行かなかったけど、2ndベストに限りなく近い3rdベスト。シーズンはじめのレースとしては、上々の結果だろう。生活環境は変わって、生活リズムも変わったけれど、これだけの好結果を残せた。練習量はどうしても落ちるけれど、それを補って余りある日々の精神的充実がある。それが実証できた。ひとしおうれしい結果だ。もたらせてくれたしおりちゃんに感謝だ。
ちなみに大都さんは4時間40分台でゴールしていた。どうも少し風邪気味だったようで、本来の力を発揮するところまでには至らなかったようだ。それでも無事に完走しきったんだから、素晴らしい結果だろう。その日の夜、奥さんのボンちゃんからすごく久しぶりにメッセージが届いた。自分と大都さんが同じ大会で完走しきったことに感動していたようだ。自分のこともねぎらってくれた。うれしい。こういう交流ができたのも大会に出たおかげ。いいきっかけを作ってくれた。
水戸駅の近くでランチをして、お買い物。カフェでまったりと休息もできた。
16時前発の特急で東京まで戻ってくる。18時前には家に帰れたから、平日の出勤日とほぼ変わらないくらいのスケジュールだ。ただ42.195km完走した充実感だけは格段に違う。
家ではしおりちゃんが出迎えてくれる。もちろん、出る前も優しく送り出してくれたし、終わった後もねぎらってくれた。ただ、そこまで大袈裟なアクションはなく、普段通りのテンションで話してくれる。帰ってきた時の第一声も普段と変わらぬ様子で「お疲れ様〜」くらいだ。前日、志木駅のカルディで買ったマッサマンカレーを一緒に調理して、夕食をとる。派手なセレブレーションも、豪華なディナーもなく、ただ淡々と日常のリズムに戻すべく時間を過ごすことができた。これでいい。これがいい。
新たな環境でのランニングライフがこれからも続いていく。
気負うことなくやっていければいい。マラソンは、ぼちぼちやるのに適したスポーツだ。とはいえ、より高みを目指したい気持ちを、心の中では燃やし続けることも大切だ。記録に関しては、現状維持では満足しない。今シーズンも自己ベストを狙って精進していきたい。
"情熱の真っ赤な薔薇を 胸に咲かせよう
花瓶に水をあげましょう 心のずっと奥の方"
(The Blue Hearts「情熱の薔薇」)
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