230527 福井
- 光太郎 笠原

- 2023年6月5日
- 読了時間: 7分
更新日:2023年6月11日
この日の朝は早い。2時半に始動だ。前日に買ったパンとおにぎりを食べて3時過ぎにホテルを出発。東尋坊へ向かう。
土曜日の大会だから、金曜日は公休取って福井入り。
おかげで平日に福井観光ができた。福井といえば「恐竜」のイメージ強かったけど、越前国は京に近くて歴史的な要衝でもあったんだなと再認識させられる。浅井長政、柴田勝家、橋本左内、岡倉天心、多くの偉人たちと縁が深い。
グルメも楽しんだ。「ヨーロッパ軒」のソースかつ丼、「秋吉」の焼き鳥。どれもおいしかった。
当日は東尋坊からスタート地点までシャトルバスで行くことにした。乗り場がわからなくてウロウロしていたけど、第二駐車場でお仲間とおぼしき人を発見したので、その人たちについていってなんとか乗車できた。スタート地点の平泉寺まで1時間半ほどかけて移動する。
参加したのは「2023 東尋坊 愛のマラニック大会」。
スタート会場はお祭り騒ぎだった。規模としては500人弱の大会だけど、みんなよくしゃべるから、にぎやか。平泉寺は、白山信仰の越前での拠点だそうで、霊験あらたかな場所。それでも厳かな感じというよりは、わいわい楽しい雰囲気だ。今回の大会は「マラニック(マラソンとピクニックの造語)」。マラソン大会に比べて、本気度が低くて、みんなリラックスしている。仲間づれで参加している人が多い。そして女性が多いのもにぎやかな要因。きゃっきゃと談笑してた。このリラックス度合いは、フルの大会にはないものだ。それでいて62km走ろうっていうんだから、精神的にタフな人が多いんだな。
朝7時スタート。その時点ではちょうどいい気温。雲も多くて日差しもきつくない。ただ時間が経つに連れて、気温は上がるし、雲は晴れて厳しい状況になっていった(大会ウェブサイトによると最高気温は29.6℃だったようだ)。
今回の大会の魅力はなんと言っても手厚すぎるくらい手厚いエイドの食事提供。その完食を目標に掲げて、見事に実行できた。それを軸に追いながらレースを振り返っていく。
・朝食のエイド(6km)
スタートしてしばらくは林道の下り坂。とても快調に入れて気持ちいい。下り終わると農道に出る。今日のコースの大半はそういう農道。田んぼも多いけど、それ以上に目につくのが麦の畑。今日一日でその黄金色の穂を何度見たことか。すごく印象的な福井の風景として脳裏に刻まれた。最初のエイドでは、みずなゼリーを食べる。さわやかな味で今日の食事がスタート。
・そうめんのエイド(9km)
つるっとしていて食べやすい。まだ序盤なので、無理をせず一杯だけに留める。
序盤の勝山市内でよく見かけたのが恐竜のモニュメント。本当にたくさんある。結構スケールが大きいからいやでも目にとまる。エイドでは恐竜ゆるキャラの「チャマゴン」と「チャマリン」が出迎えてくれる。恐竜オシがこれでもかってほど伝わってくる。

・チョンガリ味噌のエイド(13.5km)
地元特産の味噌できゅうりをいただく。甘めでコクのある味噌。思った以上においしい。
このエイドを過ぎてからは九頭竜川ぞいを走る。えちぜん鉄道勝山永平寺線というローカル路線が並行するように走っていて、たまに電車が通る。長閑な風景だ。渓谷沿いの道を走るのは気持ちいい。対岸は岩壁になっていて地層がよく見える。いかにも化石が出てきそうなところ。山の斜面もキレイに見えるから、紅葉の時期とかいいだろうなと想像する。もちろんいまの新緑の時期も悪くない。
・寿司のエイド(18km)
エイドのあった九頭竜川流域の名産「木の葉寿司」。ご飯ものはうれしい。ネタはおそらくマス。葉っぱがむきづらくて苦労するも、一口サイズはちょうどいい。
・ニンニクラーメンのエイド(20km)
その場でゆであがった麺にスープをかけ、ニンニクチップをまぶして、提供してくれる。かなり濃厚な味、良い塩分補給になる。
・胡麻豆腐善哉のエイド(25.5km)
初めて食べた新鮮な食感。善哉は好きだし、胡麻豆腐も好きだから、うれしい。地元永平寺の精進料理だそうだ。また食べたい。
このあと、川を石段で渡る箇所があった。そんなところがマラソンコースで入ってくるのは初めてだ。それなりに走ってきたあとだから、足がふらつかないかと心配になり、慎重に進む。楽しい経験だった。
・アイスクーリッシュのエイド(30.1km)
うれしい冷たさ。最初は硬くて出なかったので 首筋に当てて溶かしつつ体も冷やす。走りながらチューチュー吸って少しずつ楽しむ。
・焼きそばのエイド(33.3km)
法被を着た方々がにぎやかにお出迎え。お祭りをコンセプトにしたエイドのようだ。ゼッケンの表記を見て、「東京からですか~、はるばるありがとうございます」だって。そういうやりとりは「来た甲斐があった」と思えてうれしい。
・ステーキのエイド(37km)
若狭牛を使ったぜいたくな逸品。炎天下、鉄板で焼いたお肉を提供してくれるから、ステーキっていうよりはBBQっていう雰囲気かな。どっちにしてもうれしい。おいしかったんで、これだけは2ついただいた。
・手打ち蕎麦のエイド(40km)
市役所の支所の駐車場に設けられた結構大きめのエイド。その場でそばを打っていた。
前のランナーとの間隔があく中、自分ひとりで到達したので、盛大に歓迎してくれた。バンドの方々が演奏を始めてくれるし、スタッフは食事、給水、シャワーといろいろ勧めてくれる。越前名物のおろしそばをいただく。のどごしがよくて、とてもいい。
・ケーキのエイド(44.6km)
前のエイドを出た後、迷子になる。ウルトラマラソンで単独走だとこういうリスクあるんだな。そのあとマップアプリを駆使してなんとかコースに復帰し、やっと到達したエイド。喜びもひとしおだ。パウンドケーキ・水ようかん・アイスコーヒーをいただく。ケーキの甘さもコーヒーの冷たさもうれしかった。
・フルーツのエイド(49km)
オレンジの果肉のおいしいメロンを食べた。
「シャワーで水あびていきな」とおじいちゃんがすすめてくれたから、頭から水をかぶる。気持ちよかったな。
この後、三國神社とその周りの古い街並みの道を通る。なかなかバラエティに富んだコースづくりだ。
・杏仁豆腐のエイド(54.7km)
ラストから2番目のエイド。杏仁豆腐食べて、コールドスプレーで体を冷やす。
先行するランナーの方とすれ違い、言葉をかわす。気のいい同世代の男性。
そのランナーを直後の坂で交わす格好になった。かなり足にきている様子。抜くときに向こうから「ナイスラン!」と言って拍手してくれた。
「坂がんばりましょう!」と返すと「もう腿がパンパンですわ」って笑顔で返してくれた。
ウルトラマラソンの終盤でのランナー同士の親近感は特別だ。つらいことを一緒に成し遂げる仲間という意識が自然と芽生える。
この方は最後まで走り切って、自分の次くらいにゴールしていた。タフなナイスガイだ。
・お粥のエイド(57.9km)
にぎやかな女性数人のエイド。名簿を見て「笠原さん~!ようこそ~」と声をかけられる。ここも前との間隔あく中、単独で到達したから、みんなでおもてなししてくれる。お粥のトッピングをテキパキしてくれたあと、イスを用意して座らせてくれる。お茶は少なくなると継ぎ足してくれて、至れり尽くせりだ。見知らぬ土地でここまでよくしてくれるとうれしいもんだ。
「この先の遊歩道キレイですよ。楽しんでくださいね」と見送られる。
・東尋坊ゴール(62km)
勧められた雄島へ続く遊歩道(雄島橋)は、想像以上に素晴らしかった。
岩壁は氷柱のような形の岩が積み重なったように見える。これがこの東尋坊界隈の岩の特色。柱状節理というそうだ。自分がこれまでに見たことのない類の岩のかたちだ。目を奪われるし、荘厳な印象を受ける。その島の入り口に大湊神社がある。ここに神様を祀りたくなる地元の人の考えは自然に感じる。ちょうどその鳥居をくぐったところで折り返し、再度橋を渡って、ゴール地点へ向かう。
最後の難関で、けもの道のような草むらを通る。アップダウンも激しくてキツい。ゴール直前じゃなかったら、嫌気がさしていたところだろう。
道を抜けると、東尋坊の観光スポットに出るので、地元の方が応援してくれる。長かったし、暑くてキツかった。それでも最後は意気揚々とゴールに到達。全体で3番目の順位になったようだ。順位を競う大会ではないとはいえ、この結果はうれしい。ゴール地点のボランティアの方にお願いして写真撮ってもらう時、指3本立ててポーズしといた。

ゴール後、最後の提供料理は、牛肉スープ。しっかりダシが出ていておいしい。

62kmの長旅だったけど、とても充実した道のりだった。「マラニック」の言葉通り、福井の情景や食べ物を楽しみつつ、走っていける。観光で回るだけでは味わえない特別なおもてなしを受けられるのが、すごくうれしかった。
会場をあとにするとき、地元の商店のおじさんが、「3位だったねえ、おめでとう!」と声をかけてくれた。
「東京から来たの?今日は大変だったでしょう?」とおじさん。
「日差し強くてキツかったけど、楽しかったですね。また東尋坊、戻ってきます。」と返した。
それが偽ざる自分の心情。こういうロングランの楽しみ方があるんだな。いい一日が過ごせた。
大会の様子をまとめたムービーです↓
https://youtu.be/t5uGgcEU3zo















































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