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230219 京都

  • 執筆者の写真: 光太郎 笠原
    光太郎 笠原
  • 2023年3月4日
  • 読了時間: 9分

更新日:2023年5月31日


京都マラソン

京都マラソンに出場する。

関西屈指の人気大会、コロナの前は抽選で参加者選びしていたほどだったけど、今回はすんなりエントリーできた。

いつも以上の強行軍日程だ。前日の土曜日は半日だけの出勤日。休みは取らず、働いたあと新幹線で京都へ移動する。

前日受付もあったんで、ほとんど観光はしなかった。そもそも京都の街をゆっくり見て回るのには2、3日あっても足りないくらい。中途半端に1日だけ回るなら、あえて時間がないことを理由にマラソン専念の旅にする。それはそれで決心がついてよかったかもしれない。


大会当日は4時に起床。本を読みつつ、ゆっくり時間をかけて朝食をとる。前夜に烏丸御池駅の近くの「フルール・ド・ファリーヌ」で買ったパンを1時間にひとつずつくらいのペースで小分けにして食べた。チキンサンドがおいしかったな。前日が慌ただしかったんで、この時間でようやく落ち着きを取り戻せた感じがする。



6時ごろホテルをチェックアウトし、会場の西京極のたけびしスタジアムへ向かった。地下鉄はさすがに混んでいたけど、思ったほどの混みようでもない。問題は雨。会場に着いた時間は小降りだったもののだんだん強くなっていった。



今回は同じ大会に出る仲間がいる。CBランニング部の塚越さんがエントリーしていて、朝連絡をくれた。おちあって行動をともにする。

更衣スペースで会うことができた。いつも通り飄々とした様子だ。


この大会のTATTAの練習ランキング。8,000人弱の登録者の中で、自分が全体の5位、彼は断トツの1位(テツヤさん)。相対的に見れば、自分も相当走ってる方だけど、彼にはまったく及ばない。TATTAの履歴眺めてると、去年のクリスマスイブには大会でもないのに100km走ってて「すげえな」と思ってた。


「100km走った時はどこを走ったんですか?」って聞いたら、

「いつの100kmの時ですか?」って聞き返された。そんなに何度も走ってるんかい。

聞けば、12月は1,100km、1月は900km走ったそう。それを誇示するでもなく、むしろ包み隠してるところがすごいところ。

「そんなに走ってないんです」って謙虚に言うんだけど、数字見ると確実に走ってる。過小報告するところがまた好感度高い。



着替えを終え、手荷物を預ける。そのあたりが一番雨も強く、びしょびしょになる。雨対策用のビニールカッパが前日受付でもらったセットの中に入っていて、みんながそれを着ている。自分ももちろん着る。あれがなかったら、スタート前にもっと気持ちが萎えていただろうな。ありがたい配布物だった。

スタートはたけびしスタジアムのトラック内。40分前に近くに着いたけど、雨を避けたかったんで、屋根がついている場所へ一時的に移動。スタジアムのスタンド席最上段へ行き、スタートまでの時間をそこで過ごすことにする。トラックに整列するランナーたちが一望のもと見渡せる。自分の属するSブロックが最前列。その後にトラック1周分、後続ランナーたちが並ぶ。さらに言えば、サブトラックもあり、そこにもまた多くのランナーが並んでいるようだ。「自分はこんなに上位カテゴリーにいるんだ」ってことを実感できる瞬間だ。このカテゴリーで出るからにはきちんと結果を残さないといけない。気を引き締めてスタートに臨む。


最前列ブロックからだから、割とスムーズにレースに入れる。ただ足元は悪くて、水しぶきがあがるのには戸惑った。それでも2kmくらいから順調にサブ3ペースに乗せられる。その辺で自分の直後のブロックスタートだった塚越さんが追いついてくれて、しばらくは並走した。彼は今回初のサブ3を狙うレースだ。


桂川沿いを北上し、渡月橋の方へ向かう。左手に嵐山の丘陵が見え、紅葉の時期はキレイだろうなと眺めつつ進む。渡月橋の手前で右に折れる。そのあたりは沿道に外国人観光客が多かった。たまたま来日した日にマラソンやってただけかもしれないけど、なんだか国を越えて応援しに来てくれてる感じもしてうれしい。

そのあたり(5km〜10km)が今日一番気分よく走れたパートかな。雨が弱まり、体もあったまってきたんで、ビニールカッパを脱ぎ捨てる。身軽になったことでよりスピードに乗って走っていける。ペースを上げたことで塚越さんを引き離しちゃったんで、そこからは単独走だ。


11km手前の仁和寺前の応援は印象的だ。門の前にお坊さんが整列して応援してくれている。和太鼓の音も鳴り響き、とても活気がある。自分も拍手して感謝を伝えた。京都マラソンを象徴する応援スポット。なんとなく通り過ぎることなく目にとどめられてよかった。


12km過ぎて少し異変がある。ふくらはぎが痛みだす。スピードを落とすほどの違和感ではないけど、張っている感じがして気になる。おそらく細かいアップダウンで負担がかかったんだろう。まだ序盤なんで不安が広がるけど、こういう時は先のことを考えず、できるだけ省力を意識して走る。そうすると痛みがやりすごせることもあるし、そうでないこともある。幸いなことに今日は前者だった。平坦なところをしばらく走っていると、まったく違和感がなくなった。これならペースを保って走り続けられる。


フルを走っていて大切だなと思うのが「いかに気を散らして、距離を稼ぐパートを作れるか」っていうこと。3時間も常に時計と距離とにらめっこして走るのはしんどいし、途中で集中が途絶えてくる。別の事に意識が向いて、ふとレースの事に頭が戻ると「あれっ、いつの間にこんなに進んでる」なんてパートがあると、その後が随分ラクになったりする。


今日はいい意味で気が散る要素がたくさんある大会だ。

まず名所名跡が惜しげもなく出てくるんで、そのあたりの光景をよく見ておこうと景色に目がいく。龍安寺から金閣寺の方向へと続くきぬかけの路や、今宮神社の参道を通ったりすると、自然と周りの景観に目がいく。前日はほぼ観光していないんで、少しでも神社仏閣を目に留めようと、キョロキョロしながら走ってた。


中盤以降は、直線を往復する折り返し区間がいくつか入ってくる。そこで反対車線に塚越さんがいるかどうかを探しつつ走るのは、随分気が紛れてよかった。ちょうどいい距離間で差があったから、かなり長い時間反対側を見ることに意識が集中して、それでだいぶ進めた。そして姿を見つけると、お互いに声をかけあって「がんばれ!」なんて励まし合うんで、より気持ちが昂る感がある。そういう意味でも彼には感謝したい。


もうひとつ気が紛れたのが、給食で提供された個包装のお菓子。「ぱりんこ(せんべい)」とか、「姫千寿せんべい(クッキーサンド)」とか。いろんな種類取ったけど、どれもタイトなビニール袋に包装されてる。これをあけるのに苦労する。雨のなか長時間走ってるから手がかじかんでるし、何よりトップスピードで走りながら袋をあけるのはかなりしんどい。なんとかあけて、小さく割った上で時間かけて食べていくと、平気で1kmくらい走っていたりする。ありがたい、そしてお菓子はおいしい。サブ3ペースに慣れてくると、このスピードでも物が食べられるようになる。それは大きな進化だなと誇れるところだ。


後半のコース上でのアクセントになっているのが、京都府立植物園だ。まさに気分転換として最適のコース。無料で植物園に入って一回りできるし、舞妓さんに応援までしてもらえるトクな場所。1〜2kmは走ったと思うけど、大会とは異世界にいる感覚であっという間に通り過ぎた印象だ。


30km過ぎで鴨川の河川敷コースに入る。ここは普段東京で走ってるランナーにとっての念願の場所。関西で走ってるランナーの話を読んだり、聞いたりすると頻繁に出てくるランナーロードだ。川沿いのランニングコースはどこも好きで、ここもすぐに気に入った。川は穏やかな流れで、川のすぐ脇の土手のない部分がキレイに舗装されたコースになっている。今回走ったところは、ほとんど蛇行していなくて、ずっとまっすぐ。前に進むことに集中できる。ここも長い区間だったけど、すぐに過ぎ去っていった感覚だ。


逆にそれが終わった後が長い。ちょうどラスト10kmくらい。京都御所とか市役所とかの目抜き通りを走るところだ。楽しいパートを終え、満足感が出ちゃって、ペースを維持するのがやっとっていう状況だった。ただ、このあたりは沿道の人が多いから、声援が励みになった。

37km地点で、THE BLUE HEARTSの"TRAIN-TRAIN"を大音量で流しながら応援してくれている人がいた。大好きな曲が意図せぬタイミングの踏ん張り時に流れてくると、より感慨深いものがある。


"世界中に建てられてる どんな記念碑なんかより

あなたが生きている今日は どんなに意味があるだろう"


歴史的建造物をずっと見てきて、それがひと段落したレース後半に、この歌詞を思い浮かべると、一層心震えるものがある。

口ずさみながら、応援の前を過ぎる。流してくれてた方に感謝したい。


一番キツかったのが、38〜39kmあたりの京都大学を通り過ぎた後に続くゆるい上り坂。脱水気味になってちょっと筋肉がつってくるし、坂を上ってて乳酸がたまっていくのが体感としてわかる。「このペースでいくとまた全身がつる」と感知し、意図的にペースを落とす。この判断を冷静に下せたことが正解だった。坂を上り切るとUターン。今度はゆるい下り坂になる。これをノーストレスのまま元のペースにあげて走れたんで、結果的に最後までペースが落ちずにすんだ。


そんな訳で、41km過ぎてからはウイニングロードだ。今回は途中から時計見てなかったけど、自己ベストとサブ3の間くらいという確信はあったんで、最後は気持ちよく走り終えることだけを考えて、ゴールの平安神宮へ向かった。大鳥居を見た時の感動はやっぱり格別だ。この荘厳な雰囲気こそ、日本を代表する市民マラソン大会のゴールにふさわしいものだろう。京都の街としての格式を感じる演出に思えた。



タイムはネットタイムで2時間56分47秒。十分満足できるセカンドベストタイムになった。雨降り続くコンディションの中では目一杯の走りができたと言ってもいい。

塚越さんは3時間2分台でゴール。目標のサブ3とは行かなかったけど、彼の自己ベストはマークできたようだ。おめでとうと伝えつつも、「次回こそはサブ3いけますよ」と伝えて励ました。もちろん彼は敗者ではなく、勝者としてこの大会を走り終えたと思う。



大会のあと、塚越さんと京都駅の地下街で食事。お店の人がマラソン大会の手荷物を見て「お疲れさまでした」と労ってくれた。1泊2日でしかも1日目は仕事のあとでの移動というつめこんだスケジュール。この大会に対する思い入れが薄らいで、流しがちになりそうだけど、一期一会の意識を持って臨めたかなとは思う。雨に濡れつつ、いろんな心の動きがありつつも、最初から最後まで楽しんで走れたし、しっかり結果もともなった。今回も思い出深いレースになったことは間違いない。

大会の終盤で聞いた"TRAIN-TRAIN"の歌詞を思い浮かべながら、また次の大会へと向かう。


"土砂降りの痛みのなかを 傘もささず走っていく

いやらしさも汚らしさも むきだしにして走ってく

聖者になんてなれないよ だけど生きてる方がいい

だから僕は歌うんだよ 精一杯でかい声で"


 
 
 

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