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221106 富山

  • 執筆者の写真: 光太郎 笠原
    光太郎 笠原
  • 2022年11月13日
  • 読了時間: 9分

更新日:2023年5月31日

第7回富山マラソン。

ここ最近ずっと足の調子がイマイチで、ファンランで富山の風景を楽しむ気満々で気楽に臨んだ大会で、結果的に自己ベスト出るっていうサプライズな結末。そんな大会の話だ。


富山マラソン


10月の長井マラソンは最終盤で全身がつって記録伸びず屈辱的な結果で終わった。その影響もあってか10月後半から、この大会の直前にかけては、まったくペース上げてのランができなかった。長井の前から少し傷んでいた左足の膝回りが、完調には程遠い状態。毎日走れるけど、6分切るペースがやっと。長井のあとは「次こそ自己ベストを!」なんて意気込んでたけど、「次の次にしよう」と切り替えた。そんな訳で大会の前々日まで毎日20kmのLSDを続け、なんなら大会もLSDで乗り切ろうかってくらいの気持ちですらあった。


今回も前日に現地に入った。上野から2時間で富山に着く。まずは富山駅近くの会場で前日受付を済まし、スタート会場の高岡へ移動した。

高岡でぶらぶらと観光。大仏・古城公園・射水神社と史跡もあるし、地元の名士である藤子・F・不二雄さんの生み出したスーパースター、ドラえもん関連のモニュメントもある。富山ブラックっていう真っ黒いラーメンも食べた。



大会のスタート地点に近い高岡市美術館にも入った。ここで見たのが、バンクシーの特別展と、藤子・F・不二雄の常設展。すごく心に残った。


バンクシーの表現方法は、とてもユニークで、かつシニカルだ。

「Napalm」っていう有名な作品がある。満面の笑みのミッキーマウスとロナルド・マクドナルドとベトナム戦争時にナパーム弾の爆撃から逃げる裸の女の子が手をつないで歩いている作品だ。構図といい、題材の選び方といい、否が応でも心に訴えかけて、強烈な印象を残す。絵が上手とか、下手とかの次元を超越したパワーとメッセージ性を持っている。そして彼の表現活動自体がとてもバイタリティーにあふれていて、その経歴を俯瞰するとすごくセンセーショナルだ。この辺の要素がうまく混ざり合ってるから、多くの人の心を動かすんだろうな。



藤子不二雄のふたりが、中学生時代に手作りで刊行していた漫画雑誌の手書き原稿があった。仲間うちで何度も回し読みしたんだろうなっていう痕跡があって、その時の様子が微笑ましく想像できる。自分も雑誌作ってた身だから、その労力の大変さがイメージできる。絵も文章も自分たちの力だけでこしらえるなんてことは、一介の編集者には到底考えられない。彼らの創造性の高さに感服した。



まったく違うタイプのクリエイターだけど、どちらも感銘受けたな。

あえて共通点を見出すなら、自分の頭と身体だけで、無から有を作り出した天才というところなんだろうと思う。旅行計画になかったけど、この美術館で出会えた奇縁に感謝だ。


前日はそんなこんなでリラックスして過ごした。泊まった高岡駅前のアパホテルは、ホテルの都合でツインルームにしてもらってた。悠々と前夜を過ごし、当日を迎える。スタート会場までは歩いていける距離だ。



東京に比べるとだいぶ朝は冷える。徐々に気温は上がっていったけど、スタート時にはちょうど10℃くらい。走るにはいいけど、待つには寒い。13,000人以上が参加する大会。スタートブロックが細分化されている中での最前列Aブロックスタート。かなり早い整列を求められる。スタート地点はちょうど日陰になっていて、日が当たらない。そこで30分以上待つんで、体が冷えてくる。手先と指先はかじかんできて、思うように動かない状態だった。


さて、肝心の足の方はというと、やっぱりベストコンディションとはいかないけど、ここ最近ではマシな方かも。ウォームアップで走ってみると、痛みは少ない。痛み止めのイブは2錠飲んだ。その時点でのレースプランは「無理なく完走」「走りはじめて調子よければサブ3.5を目指す」くらいな控えめなところだ。


号砲が鳴って、スタートを切る。動き出しは、Aブロックの周りにまったくついていけない。手足のかじかみもあるんで、思うように走れない状態だけど、「ぼちぼちいこう」と決めてるんで、焦りはない。それでも入りの1kmが4:40で、次が4:30弱。これで無理してる感覚はないんで、悪くないタイムでまとめられそうだなと自信が持てる。


古城公園、高岡大仏、山町筋と高岡の観光地をぐるぐる回るセクションが終わり、庄川沿いを北上するコースに入る。

この辺りで完全に身体の憂いがなくなって快調になる。温まってほぐれてきたこともあるし、イブが効いてきたこともある。この河川敷のコース自体落ち着くところ。普段走ってる荒川沿いを彷彿とさせる道。自然とペースが上がって4:10秒台になる。まったく無理してあげた感覚もないんで、しばらくはこれで進もうと決める。

川を下りきると海に出る。日本海だ。今日は風もなく穏やかだ。はじめは漁港沿いを走る。気持ちいいんで、4:00秒台に自然とペースあがる。


20km過ぎたあたりで、このマラソンの一番の名所、新湊大橋を通る。

Webサイトによると「総延長はアプローチ部分も含めて3.6km、橋を支える主塔の高さは127m、海上に架かる主橋梁部は600m。日本海側最大級の斜張橋」だそうだ。たしかにスケールの大きな橋。自分の足で走って渡るものとしては、キャリア最大の橋だと思う。はじめに 50m上るってことでびびってたけど、斜度はさほどでもない。無理なく上っていける。そして上るにつれて眺望がどんどん良くなっていく。まず左手に大型の帆船、海王丸が見える。この船がかっこいい。白いシャープな船体と、鮮やかなオレンジのマスト。何度も左側に目を向けて、見入ってた。橋自体も構造物としてかっこいい。海に浮かぶ塔の中を進んでいくような感覚だ。そして、頂上に立った時、眼前に立山連峰の見事な山並みが見える。これがまた素晴らしい。運が良かったのは、今日が雲ひとつない快晴の一日で、しかも風も穏やかだったこと。北陸地方の11月にここまでの好条件揃うことなんて滅多にないらしい。ごく控えめに言っても今年見た風景の中ではベストな眺めだった。こんなに素敵な光景見れたマラソン大会は初めてかもしれない。これが見れただけでも、富山まで来て良かったなと思える。


橋の頂点のところが、ちょうど全コースの中間地点になっていた。

その通過タイムが、1:29:01。サブ3ペースをちょっと上回るくらいのところまで上がってるのを自分でも認識できた。

「今日はサブ3狙っちゃおう」と、そこではじめて野心を持つ。橋の頂上からは長くゆるい下りだから気分的にも一息つける。中間点の前後には給食も食べられた。「かりんとうまんじゅう」と「甘金丹(かんこんたん)」ていう創作和菓子。どっちもおいしくて元気が出た。とても前向きな気持ちで後半戦へ入った。


23kmくらいのところで、サブ3のペースランナーと並走している集団に追いついた。自分も前半のうちにはサブ3ペースになってたはずだけど、まったく見えてなかったから、彼らが結構早めに進んでたようだ。その時点で20人以上の大集団。そのままのペースでいけば、追いついた自分の方が早いから、そのままサッと抜いていくこともできたけど、抜かずに集団走に入る選択にした。

メリットはふたつ。

「風除けになって負荷が少ないこと」「ペース判断を人に委ねられること」

この選択はよかったように思う。前に壁作って追走するとホントにラクだ。

デメリットもある。ごちゃつくことだ。特に道狭いところと給水がポイント。なんとか接触しないように気をつけて走る。30km近くまで省力で距離稼げた感じだ。


それでも堪え性ないのがランニングにおける自分の性。

30km手前の給水で集団がばらけて、ペースランナーより前につく感じになったんで、そのまま集団より先行しちゃうことにした。

このあたりで、残りの距離とその時の自分の余力を考え「このまま最後までいける」って確信した。

そっからは気持ちよかったな。前回の長井の時とはまったく逆で徐々にペースが落ちていく先行ランナーを抜いていける。35kmくらいまでの間が今日一番乗ってたパートだ。中でも嬉しかったのは、この大会のゲストランナー藤原新さんを33km地点で抜けたこと。同い年のオリンピック出場ランナーより、今日この時点では自分の方が上回っているっていう優越感たるや、相当なもんだ。結局彼は3時間30分くらいでゴールしてた。もう少し接戦だったら、より気持ちよかったんだろうな。それはぜいたくな望みだけど。


さすがに30kmからのペースあげはタイミング早すぎて35km過ぎると上げられなくなってきた。それでも4:10台はキープしてるから、落ちてるって感覚でもない。

38km過ぎたところで時計見たら2時間40分くらいだった。そこで今日の目標を「サブ3」から「PB更新」へ一段階上げる。

ゴール近づくにつれ、沿道の声援も増えてきてさらに気持ちが昂る。声出して「ありがとうー」とか言いつつ走り続ける。

神通川を越す富山北大橋を渡ったところでちょうど41km。カメラマンに声かけられたんで、握り拳で応えた。

ゴールは富岩運河環水公園前。前日受付でも来たところで、とても美しい景観の公園。「世界一美しいスタバ」があるってことでも有名だそうだ。紅葉の時期ですごくきれい。

最後は公園脇の直線道路で、300mくらい手前からアーチ状のゴールが見える。記録狙うときはいつも最後バタバタになりがちだけど、今回はペース落とさず最後まで走りきることができた。


ゴールのあと、すぐに自己ベスト更新を確認したんで、ゴールのあとはさながらウイニングロードだ。ゴールから更衣室までの距離が妙に長かった。普段だったら、ストレス感じてたろうけど、その時は栄光の道を十分に堪能した。「滝と水の広場」の水門から見える運河の景観がすごく美しい。印象深い場所になったように思う。



イベントエリアでは、その水門のハリボテをバックにタイムを掲示して写真撮れるブースがあった。他の大会なら通り過ぎてたろうけど、今日は是非撮っておきたかった。記念に残るいい写真だ。



レース後の補給も十分に楽しめた。名産の白エビ天丼も食べたし、駅前に出てた屋台ブースで中華まんとかお菓子も食べられた。帰りの新幹線も予定通り乗れて、行動予定完遂。完璧な週末だ。



さて、正式タイムのことを書こう。

グロスタイム 2:57:05 ネットタイム 2:56:54

パーソナルベストを約40秒更新できた。とてもとても意義ある40秒。初めてサブ3を達成した、2019年の湘南国際マラソンから丸3年かかった。マラソン始めて3年もPBの更新ができないのは、初めてだったんで、なかなかもどかしい日々だった。今シーズンのどこかで達成したいなとは思ってたけど、ファンランの気持ちで臨んだ今回まさかできるとは。なんだか不思議な感覚だ。

無欲さが良かったのかもしれないし、前半抑えめにならざるをえないコンディションで入って、後半調子出てきたところでペース上げられたのが良かったのかもしれない。でも、自分が信じているのは、これまでの練習の積み重ねの成果が実ったっていうこと。そう信じると一番報われるんで、そう思うことにする。

 
 
 

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