221016 山形
- 光太郎 笠原
- 2022年10月30日
- 読了時間: 8分
更新日:2023年5月31日
10月のはじめにCBランニング部の練習会をした。

石田さん、塚越さん、自分の3人。去年の12月以来だから10カ月ぶりだ。そこでいい刺激を受けた。
まず塚越さんの走行距離に驚いた。9月は860km走ったそうだ。自分も相当走ってた自信あったんで、それ以上の距離を聞いてびっくり。「負けられねえぞ」って気持ちが燃えた。
そして石田さんにはいつもモチベーションを上げてもらえる。今回もビルドアップ走で、徐々にラップを早くしていった。サブ3ペースまであげた10km過ぎで「もっとあげましょうか?」って声かけられる。正直しんどいなあとは思ったけど、「いきましょう!」と提案に乗った。そっからの3kmを3:40ペースにあげて並走。「早え!」って思いつつ、アドレナリン全開、気持ちよく疾走した。
石田さんは、今回の長井でも一緒に走る予定。「レース本番でも、40kmまで並走して、そっから『あげましょう』って声かけてください」って頼んでおいた。
ところが、直前で、石田さんの息子さんがコロナ陽性になって、やむなく断念。残念すぎる展開だった。
彼のためにもがんばってこようと、気持ちを引き締めて大会に臨む。
前泊の場所は米沢にした。長井までは電車で1時間弱。宿も多いし、名所史跡も多いんで、ここを選んだ。
米沢の賢臣といえば、上杉鷹山公。これまでにもいくつか本を読んできたけど、今回の訪問を機にまた別の本も読んで、下準備。そして「米沢市上杉博物館」を訪れる。
鷹山公についてのショートムービーを2本見る。生涯をかけて破綻状態にあった米沢藩の再興に尽くしたストーリーに感動する。
自分を律し、鍛錬し、行動する。求道的な生涯を送った人物の鑑とも言えるべき存在だ。学ぶべきところが多い。この人に触れられたことだけでも、米沢に来た甲斐があると思えた。

そして米沢といえば、米沢牛。もちろん食べました。
「米沢牛亭 ぐっど」っていう店。ステーキ、すき焼き、しゃぶしゃぶ、いろんな食べ方の選択肢あったけど、焼肉風の食べ方を選んだ。ロース焼肉重。
うまい!感動的にうまい。肉が柔らかい。コクがある。そしてとろけるような甘みがある。焼肉のソースもおいしかった。間違いないチョイスだった。近江牛も神戸牛も良かったけど、最新ランクでは、米沢牛が上位だ。米沢飯でいえば、夕飯の後に食べたずんだ入りのおはぎがおいしかったな。レース前にいい糖質補給ができた。
過不足のない睡眠時間を摂り、いつも通りの時間に始動。ホテルの朝食ははじまってなかったから、スーパーで買った助六のセットを食べて出発。
ローカル線を2本乗り継いで、南長井まで行く。どちらも1両編成のかわいらしい電車。そんなに参加者多くない大会だけど、1時間に1本の1両編成の車内だと、ランナーと思われる人の占める率が高い。南長井の駅から歩いてしばらくいったところにある陸上競技場とアリーナが併設された施設が会場。早くも葉が紅く色づきはじめてた。
スタートは9時25分。コッペパンとあんパン食べて、準備万端。日差しが強い。さすがに9月の田沢湖よりはマシだけど、それでも日差しが直に当たるのはうれしくない。フルの参加者は400人強。あとで知ったけど、ハーフも同じタイミングでスタートだったから、その倍くらいの人がいる。それでもたいしてゴミゴミする感じはない。
先月の田沢湖に続き、今回もTATTAの練習ランクは全参加者中1位。ここにいる誰よりも長く走ってきた自信と共に走る。
前半から快調に入れた。はじめの1kmから4分台前半だったし、2km目には4分切るペースにあげられた。レースまでの数週間、左足の腰の下から膝の外側にかけて痛みがあったんだけど、それはまったく気にならない。おそらく鎮痛剤でごまかせているようだ。
今回のコースは2周の周回。前半部分だけ違うコースで、後半は同じ。
長井は最上川の舟運で栄えた町。周りは山に囲まれているけど、長井自体は全般的に平坦な土地。今日のコースもほとんどアップダウンはないんで、難しいコースではない。
集団走と単独走を組み合わせながら前半を進む。集団走でしばらく走ったあと、ペースが上げられそうなら上げる。集団ごと前のランナーに取り付いたら、少し離れて密集を避ける。そんな感じを繰り返すんで、ペースが一定しない。あがる時には3:40台になってた。こないだの練習で「早え」と思ってたペースだけど、それほど負荷には感じない。練習の成果が表れているようでもある。
1周目の後半ではストライドが大きくて息遣いの荒いランナーが、自分に競りかけてくるように走ってきた。抜きつ抜かれつの並走になる。そのおかげもあってハーフ時点の通過タイムは、1時間22分台。断トツで自己ベストのペースだ。
ちなみにそのストライド大きいランナーはハーフで走り終えてた。
「そうか君は半分なのね(^^;)」と思いつつも、自分は後半へ向かう。
全体の14位、種目別(年代別)では2位で、中間地点通過だった。
順調、とてもとても順調な前半。ただ、いま考えるといささか早すぎたのかも。でも間違いなくいい結果出ると確信してたんで、気分は悪くない。
25km過ぎまではそのペースを維持。そこから徐々にオーバーペースの代償を支払わされる。「このペース、キツいな」と感じはじめると、頭ではわかっていてもペースを落としていく。練習で長く走ってても、フルスピードを維持するのはまた別の話。自分の不甲斐なさを感じる。それでも一気には落ちないところがまだ救いでもあり、練習の成果でもあるんだろう。1km15秒くらいは落ちるけど、なんとかガタ落ちせずに進み続ける。4:30くらいのペースならなんとか維持できる。
35kmくらいまでくると、ゴールまでの残り距離考えて、「これなら最後まで持つ」と見込みが立つ。25km過ぎてからは何人かに抜かれてたけど、逆に抜き返すような人も出てきて、前向きになれたセクションでもあった。
ところが、ところがです。
体の変調というのは予期できない。38km過ぎたあたりで足裏にちょっと痙攣が出る。40km過ぎていよいよ本格的につって、一時立ち止まるほどになる。完全に脱水状態だったんだろうと思う。
それでも少し休むと回復するんで、だましだまし慎重に進む。少しでも筋肉が硬直してきはじめると手足を振ってストレッチをする。メドゥーサの魔力で体が徐々に侵食されて石化するような感覚。なんとかそれに抗うんだけど、魔力が強い。だんだん体をだませなくなってくる。
41kmからが本当にしんどかった。少し進むとすぐにつる。
「オレの身体、持ってくれ〜」と祈りながら走る。メンタルは完全に前向きにコントロールできてるけど、フィジカルは言うことをきかない。
今回のコースは、最後が陸上トラック1周する設計になっている。これが人生で一番長いトラック1周だった。たぶん競技場入った時点で、2時間54分台だったから、普通に回れば自己ベストが出るペース。とてもじゃないけど、普通に走れない。なんとか休まずに回ればサブ3はマークできるはず。それが結果的には3時間2分台のゴールだった。たったトラック1周走るのに、8分かかった計算だ。
とにかく歩くこともできない。一番ひどいのがゴール前50mくらいのところできた。そこで1〜2分まったく進めなくなった。
全身がつって硬直するんで、身じろぎすらできず、その場にへたり込むことすらできない。固まったまま、その場で立ち尽くすだけ。ゴール前でテープ用意してくれてたボランティアの女の子が、「なんでこんな直前で止まるんだろう。」って不思議がっている。いや、そっちに行きたいのはやまやまなんですが… って気持ちだ。
なんでこんなにちょうど売り切れになるんだよ、オレの身体〜。自分のスタミナの在庫量に不満一杯だった。
なんとか回復して歩きだし、ゆっくりゴールテープ切った。テープ切って、あんなに悔しいのは初めてだ。

今回フルの難しさを改めて実感した。どんだけ練習してもフルをプラン通りに走り切ることは、カンタンじゃない。
悔しい。悔しさにはあふれているけど、不思議と失望感はない。むしろ「次こそは自己ベストを」と燃える発奮材料になってくれた。41km走った時点では、レース後にこういう感情になるとは予想もしていなかった。こうやって自分の中でわきおこる予測不可能な感情に出会うために大会に出続けている。そういう意味では、大収穫の大会だ。いや、やっぱり悔しいけど。
レースの後は、おもてなしの芋煮とおにぎりをもらった。おいしい。消耗し切った身体に沁み入る。なんとか動ける元気取り戻したんで、帰路についた。

再び上杉鷹山の話。
童門冬二の「小説 上杉鷹山」の中に、高め合えることの尊さを説く一説があった。
理想を達成するため高い目標を立て、それを地道に追い求めていく鷹山たちのグループがいる。一方でそのやり方へ批判的な目を向けるグループがいる。批判家は理想家がつまずくと、「ほら無理じゃないか」とすぐにあげつらう。それに対し、理想家は「いや、まだまだ」と音をあげず、努力を続ける。
鷹山はその努力を続けたことによって、結果的に成功を収め、後世にも名を残しているんだけど、彼の改革が実を結ぶまでには、数十年の月日を擁している。成果を求めるには長い時間が必要だし、たとえその努力が十分に実らなかったところで、努力はそれ自体、有意義なものだ。
理想家と批判家、どちらの日々がより充実しているか。それは間違いなく前者だと思う。
今回は眼前で目標達成が叶わなかったから、先に向けていい目標が持てた。それを実現するために、日々努力するようにしよう。
幸い自分には一緒に努力できる仲間がいる。今日の結果を受けて、CBランニング部の仲間とは、また来月も練習会をしようと企画した。
こうやってポジティブな気持ちを持ち続けて、充実したランニングライフを楽しもう。
「成せばなる 成さねばならぬ 何事も 成らぬは人の 成さぬ成けり」(上杉鷹山)
この言葉がいまの自分を後押ししてくれる。

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