220605 北海道
- 光太郎 笠原
- 2022年6月12日
- 読了時間: 7分
北海道に来るのはたしか3回目。6月に来るのは初めてだ。
「6月の北海道、とてもいい。」
空港出て、レンタカーで走りはじめて、真っ先にそう思った。
大会前日に現地に入り、初日は観光する。
その前の週の日曜日、東京競馬場で日本ダービーが開催され、武豊騎手騎乗のドウデュースが優勝した。
感動的なレースだった。武騎手をずっと応援してきただけにこの勝利には心揺さぶられた。最年長でのダービー勝利。すごいもんだ。
昨年の東京パラリンピックの金メダリスト杉浦佳子さんが言っていた。
「最年少記録は生涯一度だけしか作れないけど、最年長記録は何度も更新できる。」
この言葉は、これから長い間スポーツを楽しもうと思っているものを、心から勇気づけてくれる箴言だ。
武さんにはもっと続けてほしいし、自分も少しでも長く記録を伸ばし続けていきたいと思う。
そんな中でまず訪れたのが、ドウデュースの生まれ故郷ノーザンファーム。正確には一般客が入場できるノーザンホースパークだ。
昔から行きたかった場所。すごく気持ちいいところだった。ボタニカルガーデン(植物園)を過ぎたところに「馬見の丘」っていう小高い物見台が建ってて、そこから「ノーザンファーム空港」の放牧地が見渡せる。とてもよく晴れていて、初夏の日差しが振りそそいでいた。すごく和やかに時間を過ごしているサラブレットの親仔を見て心癒された。ここに来ただけでも、北海道に来た甲斐があったな。
あとは安平町で偶然見かけた、一面に広がる菜の花畑が壮観だった。あんな広いのは初めて見た感じだ。そもそも満開の菜の花がこの時期に見れること自体がうれしい驚き。なんともいいタイミングでその道を通れたみたいだ。

前日の夜は「虎徹」のみそラーメンとザンギをむしゃむしゃ食べた。
当日の朝は、ホテルのビュッフェでお腹いっぱい食べて、栄養補給完了。会場へはレンタカーで行く。
参加したのは「千歳JAL国際マラソン」。
もともと義兄の公志君から薦められて参加した大会。千歳市の山間部が大半を占めるコース。未舗装の山道だ。普段は使われていない道で、この日だけ解放される。そのコースの魅力を教えてもらい、ぜひ走りたいと参加を決意した。
朝の時点での気温は10℃くらいで、最高気温は18℃。日差しがあるんで、気温ほど寒くは感じない。ただ日陰は寒い。会場がどんな様子かわからないんで、集合時間の直前まで車の中で本を読んで過ごした。読んでたのは、トルーマン・カポーティの「冷血」。1959年にアメリカのカンザス州で起こった一家4人惨殺事件を追った、ノンフィクションノヴェル。すごく暗くて重い。こんな気持ちのいいマラソン大会の直前に読む内容ではないんだけど、読み進むのをやめられないほど面白い。結構待ち時間あったけど、あっという間に直前になってた。
駐車した北栄小学校から集合地点の青葉公園へ徒歩で移動。受付の場所から、開会セレモニーをする陸上競技場まで15分くらい歩く。さらにそこから15分くらい歩き、公園南側のスタート地点まで行く。スタート前にこんだけ歩かされるのは初めてだ。それでもネガティブな気分はない。なんてったって気持ちいい初夏の北海道の公園。歩いているだけで爽快だ。

9時40分にスタート。スタートしてから2kmだけは一般道を走る。その後いよいよ未舗装道ゾーンに入る。ここからは延々と山登りだ。
登山で使われる道ではないんだろうけど、印象としては、登山道に近い。大会のウェブサイトに載せられていた事前情報だと、数日前の雨の影響で悪路になっているところもあるということだった。実際にはそれほど気にならない。割と固めの土道が続くっていう感じだ。道の両脇はひたすら森林。日差しは注いでいるけれど、ずっと木陰になっているんで、風が涼しいし、空気が爽やか。走っていてこんなに気持ちいいところはない。
走りはじめてすぐに「来て良かったな〜」と感じる。大会の序盤にそんな感想持つのは、初めてかも。
ただ常に傾斜がある。高低差はコース全体で約155mある。22kmまではひたすら上る。一気に上るんじゃなく、ダラダラ上る。覚悟はあったから、それがイヤということはない。走っていてキツいということもない。恐いのは、22kmも続けて上るっていうのを経験したことがないので、疲労が蓄積されていくと、ブレーキかかるんじゃないかってこと。こればっかりは走ってみないとわからない。
そんな道なんで、そこに住んでいる人はいない。ということは沿道の応援ていうのは皆無だ。ただそれを補って余りあるほど、エイドのボランティアの方の感じがいい。大声張り上げて応援してくれる。だいたい5kmごとくらいにあって、それを毎回楽しみに進む。高校生くらいの子が多かったかな。男の子からでも女の子からでも、年下の子たちから声援もらえるといい気分だ。
16kmくらいのところで一回迂回路に入る。これが結構重要な寄り道。その迂回路だけフラットか、やや下りくらいの傾斜。これがないと前半はホントに上りっぱなしだ。1kmくらいで、また元の道に戻って、上りはじめる。この小休止のおかげで、気持ち入れ直せた。
上り道も後半になると、ランナー同士で励ましあう声が聞こえる。「もう少しで終わりだから。」
ツラい道のりでも、終わりが見えればがんばれる。今回のコースは前半だけが上り。はっきりしている。そこをとりあえずの目標にするのは理に適っているように思われる。ただ問題なのは、そこでまだ半分の道のりだということ。上りは終わるけど、レースはまだ半分ある。
22kmからの下り。当然ペースは上がる。1kmごとの距離表示がとても短く感じる。先月、柏崎で走った時は、ヒザ痛で坂の下りがツラかったけど、今回は大丈夫。それでもいつ爆弾が爆発するかはわからないという恐怖は持ち続けている。ペース上がりすぎないように注意する。
延々と続く下りっていうのも初めての経験。走りながらコツを習得していく。
前に倒れるような感覚で走るといいようだ。
意識して足を進める必要がないので、エネルギーは最小で済む。「着地はつま先」を意識する。軽く地面に接し、間髪入れずに足を離し、また前へ倒れる。そうしていけば、力を使わず、それなりのペースで走れる。これはいい。30kmくらいまで、実に順調に走れた。
前半部分の疲労が、この後きいてくる。コース後半でも少しだけ上りがある。このギャップによるカウンターがキツい。全く走り方が変わるので、グッと負荷がかかり、足が進まなくなる。周りのランナーもペース落ちる人が多い。再び下りになっても、足は進みづらくなる。
今回強く思ったこと。
「みんながキツい上りより、ラクなはずの下りの方が歩く人が多い。」
もちろんレースの後半だからってこともあるけど、それだけではなく、心理的な要因もある気がする。自分もツラくて、周りもツラい時には休まない。ただ周りがラクになったところで、自分だけがツラいなら、休んでもいいかって気持ちになる。そういう責任感の開放から、休みはじめるんじゃないかと想像する。それが正しいかどうかはわからないけど、少なくともそういう人の方が好感が持てる。歩き出した先行ランナーたちに「がんばれ!」と心の中で声をかけながら、抜かしていく。
34kmくらいで未舗装部分が終わり、再び一般道に入る。とはいえ、ここもまた林に囲まれた気持ちのいいコース。千歳川沿いをスタート地点まで戻っていく。6月の日差しの強さが、終始まったく気にならない。後半までこんなに爽やかに走れると思っていなかった。ペースもそこまで落とさずに最終盤も乗り越えられた。ヒザの調子も大丈夫そうだ。

40km過ぎると再び青葉公園内に入るんで、ゴールが近いことを感じる。この最後の2kmはコース内でも特に気持ちのいい部分。林木に囲まれたランニングコース、脇を流れる千歳川、地元の方からの応援の声、すべてがエネルギーになる。改めて「今日ここで走れて良かったな」と思いながら、最後まで走りきれた。

タイムは3時間16分台。今回は明確なタイム目標なく、ファンランのつもりで出たけど、想定以上のタイムだったんで、驚いた。
3週間前の柏崎でも、その時の足の状態からして、サブ4出せたのがうれしかった。そして、それより30分以上早いタイムで走破できたことが、心底うれしい。フルマラソンは、毎回毎回違ううれしさをもたらせてくれる。
レースの余韻に浸りながら、駐車場の北栄小学校まで歩いて戻った。
ほとんど人がいない。レース会場に比べて、すごく静かだ。のんびりクールダウンできる。校舎の脇の水道を使わせてもらい、顔洗って、頭から水かぶった。水が冷たくて、最高に気持ちいい。心地よい風が吹いて、濡れた頭を乾かしてくれる。フルマラソンでの疲れと汚れをきれいに洗い落としてくれた。人生最高の洗顔だった気がする。
レンタカーのバックドアあけてそこに座り、景品でもらった大福と昨日千歳のスーパーで買ったチーズパン食べた。大会のゴール地点より、その駐車場で見た景色の方が印象に残ってる。いい時間だったな。

これで21-22シーズンのフルマラソンはすべて終わり。大会参加は秋まで一休みだ。
それまではのんびり自主ランをしていこう。そしてよりよい来シーズンを迎えられるようにしよう。
大会の時の様子をまとめた動画です↓
https://youtu.be/QFCjJivqd4I
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