220313 茨城
- 光太郎 笠原
- 2022年3月21日
- 読了時間: 8分
更新日:2022年4月9日
「茨城100kウルトラマラソン」で、初めてのウルトラマラソンに挑戦した。

前泊で土浦のビジネスホテルに入った。前夜は夜7時に消灯っていうスケジュール。寝たのは、さすがにもう少しあとかも。
当日、朝2時半(朝とは言えないけど)起床。朝食はコンビニで買ったのり巻きとスパゲティサラダ。3時にホテルをチェックアウトしてトヨタのレンタカーで出発。
会場までは50分。もちろん道はガラガラ。時折車に会う。おそらく同じ目的地へ行く人たちだろう。
行方市の北浦公民館が会場。4時だから真っ暗だけど、その周りだけデカい照明施設に明々と照らされて、要塞みたいな感がある。これからイベントがはじまるという気持ちを昂ぶらせてくれる。

受付して、公民館のホールで待機。スタート前最後の補給は、昨日買った「どてきん」の大判焼き。ボリュームがあって、おいしい。
レースにはバックパックも腰のポーチもつけていく。スポドリ2本、ジェルドリンク2本、スマホとモバイルバッテリーが今日の手持ちの武器。
シューズは今月おろした2代目の「インフィニティラン2」。周り見ると、意外と手ぶらの人が多いことに驚く。
レース前のコンディション。
やや膝が痛い。おそらく軽い「腸脛靱帯炎(ランナーズニー)」だろう。ただ、2週間くらい前はもっと固まってたから、少しほぐれてきている感じではあった。昨日は今年初めてノーランの一日にした。それでちょっとは体が軽くなってる。
気象的には抜群のランニング日より。
まず曇ってて、日差しがない。気温は暑すぎず、寒すぎず、ちょうどいい。結果的にレース中もずっと曇っててくれたんで、すごくありがたかった。ほぼ湖畔でさえぎるものがないコースなんで、日差しが大敵。それがあったら、もっと苦労していただろう。
5時にスタート。
暗闇の中を走るんで、どこへ行くのかわからない。とりあえず前のランナーについていこう。夜光用のライトをつけている人が1/3くらいいる。これがありがたかった。
参加者は400人くらい。はじめだけは団子状態。キロ6分台で入る。
序盤10kmは北へ向かう。北風が強い。
全コース中の北端くらいの場所で、ちょうど日が昇る。そこから折り返し、昇る太陽を見ながらスタート地点まで戻る。これで20km。音楽も聞かず、静かに乗り切る。
5kmごとに距離表示が出る。それ自体はありがたいけど、距離の下に「ゴールまであと90km」という案内も出る。その情報はまだ早いよ。せめて半分過ぎたくらいからでいいよ。
20km過ぎから音楽を聞きはじめる。しばらくは南へ向かうんで、追い風だ。気分があがって、ペースも上がる。5分30秒台を切って、5分台前半くらいまで上がる。
5kmごとにエイドがあって、その度に立ち寄る。
エイドの親身さは、普通の大会とは比較にならないほど高い。いろいろ声かけてくれるんで、立ち止まってしばらくしゃべっていく。もちろん、補給食もたくさん持っていく。
今日一日でどれだけ走りながら、ものを食べたか。
覚えているだけでも、おにぎり3~4個、コッペパン2個、どら焼き3~4個、乳菓「酪」2~3個、つくね串1個、ジェルドリンク4個。
飲料補給は、持っていったスポドリ2本以外にも、給水所で何本かポカリをもらった。
今日感じた「ウルトラマラソンを走るために必要な3つのもの」。
強靭な体力、強靭な精神力、そして強靭な胃袋。
今回は全体的に補給がうまくいった。最後の近くまで固形物を摂れたし、消化系のトラブルがなかった。
排泄は小を2回。30kmと65kmくらい。すごく計画的だ。
脱水にならなかったのも大きい。脱水になると痙攣がはじまる。そして一度痙攣すると、レース中には完調には戻らない。それがネガティブな思考を生んでいくという悪循環になるけど、そうはならなかった。精神的に平静のまま、最後まで走り通せたと思う。
はじめの42.195kmを3時間52分台で通る。サブ4ペース。体への負担はそれほどなく、気持ちよく走れている。
それにしても「はじめの42.195km」ってすごい言葉だ。
この辺からだいぶばらけて、前後にランナーがいなくなる。たまにペース落ちてる人を抜くようにもなる。フル走ってるんだから、疲れてる人出て当然だ。
50kmに到達。これでようやく半分。
まだ体力に余裕はあるものの、あと半分走れるかどうかはわからない。でも誘導員のおじさんに「お~、余裕あるねえ」なんて声かけられる。それ聞くと、「そうか、余裕あるのか」なんて自信がわく。
55kmくらいでコースの南端に達し、そこからしばらく東へ進む。あとで見ると、このあたりで全体の最速ラップを記録している。5分0秒台だ。
一本道で往復するところなんで、先行するランナーたちと顔を合わせる。これもウルトラの特徴だろうけど、ランナー同士が励ましあうような声かけをする。自分もできるだけコミュニケーションを取る。声をかけることで自分の気持ちも高まる。
60km手前に息栖神社があり、そこで折り返す。
折り返した後で、向かい風の強さに驚く。ここを追い風で走ってたんで、直前にハイラップになっていたんだな。そこからradikoで「深夜の馬鹿力」を聞く。これはすごくよかった。そこからの2時間、約20km分を、いつも通りのリラックスした状態でジョグできたんで、距離を積み重ねられた感じだ。
70km手前に鹿嶋神宮の一之鳥居がある。湖に浮かぶ鳥居だ。その近くにエイドがあって、アントラーズのマスコットの「しかお」がお出迎えしてくれる。足を止めて、一緒に記念撮影した。特にファンていう訳ではないけど、こういうふれあいで心を和ますのは重要なことだ。

だいぶランナー同士の間隔があいてくるんで、視界にランナーがひとりもいない場面が出てくる。そんな時でも、運営の人が頻繁にチャリで巡回してきてくれる。こちらに気づくと、「がんばって〜。」と声をかけられるんで、こっちもサムアップして応える。
向こうからしたら、容態のチェックの意味合いがあったんだろうけど、こちらにとっては、自分を鼓舞するためのサインにもなる。とにかく走る情熱がなくならないように心がける。
80kmすぎ、今日感動したことのひとつ。
前を走るランナーがいて、少しペースが落ちている。自分のペースの方が早かったので、彼を抜いていく。
抜く時に、彼が自分に対して、拍手を送りながら「ナイスラン!」と声をかけてくれた。
これまで、抜く側が、抜かれる側に対して、励ましの意味をこめて声をかけるのは経験したことがあったし、自分もやっていたこと。それを、よりつらいであろう抜かれる側のランナーがしてくれたことに感激した。
ウルトラマラソンならではの、お互いに対する敬意を感じる瞬間だった。
85km過ぎのエイドを過ぎる。
その時の自分の体力の貯金を計算して、「これなら完走できる。」と実感を持てるようになった。実感は持てたものの、あと15kmはそこそこ長い。相変わらず前後の見えない単独走が続く。5kmごとのエイドが本当に長く感じるようになった。
『次のエイドで何食べよう』とか『釣りをしてる中学生楽しそうだな〜』とか、少しでも心愉しいものを探しながら進む。
「なるべく小さな幸せ」を「なるべくいっぱい集めて」走っていく。
「そんな気持ちわかるでしょう?」
95kmすぎの最後のエイドは感動的だった。
100mくらい手前で自分の姿を認めると、そこにいるみんなで手を振って迎え入れてくれる。前後にはほかにランナーはいなくて、自分のためだけに手を振ってくれている。そんな経験は初めてだ。
もちろん、着いてからも温かい言葉をかけてくれる。
「たくさん食べてね」って言われるけれど、そんなに食欲はない。「じゃあ、持っていって、あとで食べてね」ってどら焼きをすすめられる。
それをポケットにねじこんで、先へと向かう。そのやりとりがすごくうれしかった。
それもあって、最後の5kmは気分良く走れた。ゴール地点に近い鹿行大橋が見えると、感動を覚えて、体が熱くなる。
北浦公民館が見えて、最後の直線の坂に差し掛かる。足は止まらない。しっかりゴールテープも用意してくれたんで、颯爽とテープを切って、ゴールできた。

9時間23分台のタイム。順位は43位/431人。
自分がゴールした直後に、女子の1位選手がゴールしてた。タイムの目標はなかったけど、とりあえずの目安になるサブ10は達成できた。平均ラップが5:38だから、フルで換算するところのサブ4ペースで走り切ったことになる。最後まで気持ちよく走り切ることができた。
ゴールして感じたこと。
まずは、自然とうれしさが溢れ、笑顔になる。あとはランナーとエイドと運営の人たちとの交流がとても感動的で、感謝の気持ちも強く湧く。
そして、とてつもない達成感がある。その反面、あっさり達成できて、あっけない印象もある。このレースに向けて努力はした。計画も練った。特に栄養補給については、情報を集めて、万全の対策で臨んだ。でも、苦労はしていない。なにか困難があって、それを乗り越えた感じはない。
とてもつらい状況が立ちはだかって、それを乗り越えた先に、たどり着いたゴールの方が、より大きな達成感を得られるんだろう。そういう意味では、今日のための準備が整いすぎていたのかもしれない。「初めてのウルトラマラソン」を大きな壁と感じることもなくゴールできた。それはそれで喜ばしいことのようにも思える。
司馬遼太郎の作品の中で、人生において自分の隠れた才能に気付いた時ほど心躍る瞬間はない、という内容の一文があった。
ウルトラマラソンが、自分にとってはそれに当たるのかもしれない。
今日のレース中、「長いな」と思うことはあったけど、「苦しいな」と思うことはなかった。
他の人が「苦しい」と思うようなことを難なくこなせるのであれば、それは自分にとって向いているということ。そこに気付けたのは収穫だ。
間違いなく言えることは、今日のレースが、とても貴重な経験になったということ。
「一日で100kmを走る」っていうのは、たくさんの人が経験できることではない。
この経験から得られるポジティブな教訓は…
その答えをまだ持ってはいないけど、後付けでなんとかひねくり出していこう。
「自分がウルトラマラソンを走ってる時、感じたのは~」みたいな前置詞をつけると、どんな話にも説得力が出る。たぶん。
それを、これから考察していけばいい。
「答えはきっと奥の方、心のずっと奥の方」
●レースの様子をまとめた動画です↓

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