211114 岐阜
- 光太郎 笠原
- 2021年11月23日
- 読了時間: 7分

前回のフルマラソンから2週間。2週間あれば、色々ある。
まりえさんが産休に入った。自転車が壊れて修理に行った。取引先の社長の入院先へお見舞いに行った。その後、工場と外注先を見て回った。2週間は決して短い時間ではない。ただ、フルマラソンのインターバルとしては短い時間だ。
金沢をサブ3で走ったんで、その後1週間くらいは筋肉の張りが取れなかった。
大会の週になって、ようやく張りが和らいできた。疲労は取りたいけど、まったく走らないのは性に合わない。前々日まではゆっくり走りつつ疲労を軽減させていく。前日をノーランニングデーにして、なんとか準備完了できた感じかな。
金沢の時はしっかり旅行計画した。回りたい史跡名所も多かったし、食べたいグルメも多かった。行く順番をしっかり考えて行動した。
それに比べると今回は雑だ。家出る時間も決めてなかった。当日の朝起きて、準備できたところで出発。目指すは岐阜駅。行き方もロクに調べなかった。名古屋から在来線で一本で行けるって記憶はあって、とりあえず進んでみる。事実、その通り行けた。こんな気楽な旅の方が好きかもしれない。
東京→名古屋間の新幹線の車中、Apple MusicでB-DASHの「平和島」が流れてきた。
「真っ青な空の下で 光ってる雲が 緑の芝生の上を ゆっくりと流れてた」
まさに真っ青な空の下、初めての土地へ行く。とても気分のいいスタートだ。
岐阜駅を出て南側へ3分くらい歩くと「サカエパン」ていうパン屋さんがある。まずそこへ行った。古いたたずまいで趣のあるお店。ここでパンを買っていった。結構気に入って、その日含めて3日間続けてここのパンを食べた。あんパンが特においしかったし、他の惣菜パンもいい。パン自体はオーソドックス、どれを食べても具だくさん。そして何より安い。いいパン屋さんがある街は、いい街だ。
岐阜駅の北側にはバスターミナルがあって、黄金の織田信長像がお出迎えしてくれる。バスで金華山の方へ行く。明日のマラソン会場もその近くだ。
まず金華山にロープウェイで登ってみた。ちょうど紅葉のキレイな時期。山並みが美しい。自分が見てて印象的だったのが、金華山の急峻さ。その周りは、まったくの平地にも関わらず、山の部分だけ急に出っぱってる。それだけ山の勾配がキツい。その分、上の展望台から見下ろすと、街が近い。肉眼でも街の様子がよく見渡せた。その近くに再建された岐阜城がある。昔の稲葉山城だ。「国盗り物語」は大好きな小説。斎藤道三と織田信長にまつわる物語を読んで、熱くなった思い出がある。実際の場所へ来ると、いかに攻略が難しい城だったかがよくわかる。展望台レストランで長良川を見ながら、ホルモンの味噌煮込み丼食べて、感慨に浸ってた。
マラソン前日の夜の食事はとても大事。岐阜駅周辺で美味しいお店を調べると、「ダ・アチェ」ってお店が良さそうだ。ナポリピザを推してるお店。パスタもおいしそう。どっちにしても糖質補給にぴったり。ここに決めた。
カウンター席に座って、料理作るところを眺めながら食事。
まずは尾崎牛のラグーを使ったビスマルクピザ。オーナーとおぼしきシェフから「おいしいですよ〜」って言葉を添えられて提供してもらった。ウマい。文句なくウマい。モチモチのピザ生地がとてもいい。ラグーは牛肉を赤ワインベースのソースで煮込んだもの。このソースがまたいい。1枚ペロッとたいらげた。
まだ食べたかったんで、カルボナーラのパスタも追加。これがまた絶品。割としっかりコシのあるパスタに、クリーミーなソースがよく合う。ベーコンが肉厚で、乗っかってた目玉焼きすら特別なものに感じる。いい夕食だ。
会計の時、「どうでした?」って聞かれたんで、「とってもおいしかった」って素直に答えられた。なかなか来れないだろうけど、岐阜に来たらまた寄りたい店だ。フルの前日としては、百点満点の食事できた。
マラソン当日。駅前のホテルからバスでふたたび金華山のふもとへ行く。川沿いにある長良川公園がスタート会場だ。近くに行くとランナーたちの姿が確認できる。今回の参加者は300人くらい、大きすぎず、小さすぎず、頃合いの規模だ。
長良川沿いのコース、長良橋と金華橋の間を往復する。その道の名を「高橋尚子ロード」という。シドニーオリンピック女子マラソンの金メダリスト高橋尚子さんが、高校時代にここで練習したことから、名付けられたそうだ。足型とシューズをかたどったモニュメントがあった。

2.5km×17周の往復っていう退屈に思える設計。でも悪くないコース。まず、ランナー用に整備されたコースなんで走りやすい。走っていると川のせせらぎが聞こえる。金華橋から長良橋に戻ってくる方向からは、金華山の紅葉が見放題。実際、飽きることなく走り通せた。
今日のプラン。
「前半は5:00で走る」「後半余裕あったら、少しペース上げる」
そして、前回の金沢でスタート早々レースプラン反故にした反省を生かし「このプランを必ず守る」ってことを一番の目標にした。
入りは順調。そもそも前回からの疲労回復の過程で、一度も5:00ペースですら走れてないから、早く走れる感覚がない。走り出してみると、ここ最近ではいい感じの足の調子。はじめの1kmが5:10くらい。「ちょうどいい」って感覚で入れた。1周終わったところでちょうど5:00ペースくらいに持ってこれた。このままペースを保つ。10kmをちょうど50分で走る。今日は珍しく毎周回時計を見てペースを確認、早くならないよう注意する。20kmもほぼ変わらず行ける。やればできるじゃん。時計を見るのって大事だね。
20km過ぎたあたりで、自分の体の調子を確かめる。
疲れはどうだろう。足は痛くないか。うん、大丈夫。まだ余裕ある。じゃあちょっと上げてみるか。
そんな感じで後半へ進んだ。
その規模の大会で直線の往復なんで、だいたいのランナーの顔がわかってくる。その中でパイロットインキの元担当の土本さんに似た人を見つけた。あとで大会結果検索で調べてみたら、やっぱり本人だった。体の右半身が前につっこむ感じの変則フォーム。その走り方だから、ただでさえ目に留まるのに、それが知り合いなんで、すれ違うたびに目がいく。今の担当から「最近めっちゃ走ってるみたいですよ」って話は聞いてた。岐阜在中ってことも知ってたから、「もしかしているかな」とは思ってたけど、実際に見つけられるとびっくりだ。地方大会で、偶然知り合い見つけたのは初めてだった。大会後に本人を探したけど、話すことはできなかった。多分もう70歳近いおじさん、結果見るとサブ4で走ってたみたいだから、大したもんだなって思う。
順調に30kmまで来た。ペースも徐々にビルドアップできてる。4:30くらいまで上がってきた。それでもそんなにキツい感じはない。こういう上げ方ができると気分も昂ってくる。そんな訳で最終盤もペース落とすことなく、むしろより上げて走れた。4:15くらいのラップもある。サブ3ペースだ。こんな配分のフルマラソンは初めてだ。気分いい。ランニングハイの状態ってのは、自分の感覚ではあんまり経験ないんだけど、この時に関しては、ちょっとその感覚を持てた感じだ。
最後までペース保って、ちょうど3時間20分くらいでのゴール。
ハーフのラップタイムがないんで、正確なところはわからないけど、前半1時間45分、後半1時間35分くらいで走り終えてる。つまり後半で10分ペースを上げてる計算だ。素晴らしい。素晴らしく自信になるレースだ。何よりうれしいのは、フル走った後とは思えないほど、心身ともに余裕があること。フツーに歩けるし、どこも痛くない。これだけ余裕のあるレース後の感覚は初めてだ。
高校生の頃、よく聞いてた、The Verveの「Drugs Don’t Work」ていう曲を思い出す。「Now the drugs don’t work」(今やもうドラッグは効かない)。今の自分にとっては、ドラッグじゃなくて、フルマラソン。これまではいつでも刺激的なものだったし、タフなものだったけど、それを日常のランと変わらずにこなせるだけの強さを手にできた感覚だ。そんな訳でレースタイム以上に満足できるいいレースになった。ヨカヨカ。

今回の旅行は、二日続けて晴天に恵まれた。ランの間は暑いくらいだけど、ランが終わると気持ちいい気候を感じられる。無事に終えた安堵感も加わり、爽快な気分で帰路に着けた。名古屋駅で回復飯を堪能。疲労回復にいいビタミンB1を摂取しようと、豚肉(味噌カツ)かうなぎ(ひつまぶし)で探してたら、両方食べられる定食に出会えた(ひつまぶしじゃなかったけど)。運が良かったな。

雑な準備で、気楽な気分での遠征マラソン。それでいて十分堪能できた二日間だった。こんな感じで日本全国行ければ、短いスパンでフルマラソン続いても、疲労ためこむこともはない。いいモデルケースになるかなって気がする。
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