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211031 石川

  • 執筆者の写真: 光太郎 笠原
    光太郎 笠原
  • 2021年11月6日
  • 読了時間: 9分

更新日:2021年11月23日


金沢駅の構内はとてもアーティスティックなデザインで、特に東口側は凝っている。

天井がガラス張りのアーチで、吹き抜けの構造。鼓門ていう壮大な造りのゲートがある。金沢に着いた途端に、一気に非日常の空間に出た感じを持ち、旅情が高まる。


マラソン前日の午前中に着いたんで、一日目は観光にあてる。北陸有数の観光地とあって、名所旧跡はたくさんある。初めての訪問だから、まずはオーソドックスなコースを選んだ。兼六園、金沢城公園、ひがし茶屋街、近江町市場、その辺だ。

とってもいい陽気だった。前日の天気予報で「何をするにも最適な日です!」って言ってた。いい表現だなって思ったし、正にその通り。歩いて回ってるだけで気持ちよかった。一番印象に残ったのは、しいのき迎賓館の前の並木道。紅葉がはじまってて、ちょうど見頃。秋の陽射しをいっぱいに受けて、赤色の葉っぱがきれいに映えていた。その時点では把握してなかったんだけど、そこが正にマラソンのスタート地点だった。当日はくもりだったんで、紅葉楽しめた分、前日に通れたのはラッキーだった。



ちょうどタイミングが重なったんで、白石への結婚祝いと、まりえさんへの安産祈願のお土産を買う。どちらも金箔工芸品のお店だ。白石へは鶴の箸置き、まりえさんへは金箔の小瓶とポストカード。ポストカードには感謝と激励の文章を書いた。ふたりともそれぞれに新しい生活がはじまるところ。その日々が良きものであるよう祈る。

マラソンの前日受付の必要もあったんで、会場の石川県立音楽堂交流ホールへ行った。会場内はもちろん、会場から少し離れたところでも、同じ荷物を渡されたたくさんのランナーたちに会う。街全体を巻き込んでの大会だってことを感じる。大規模なマラソン大会前の独特な雰囲気だ。「さあ、いよいよか」と気分が高まる。


金沢グルメも楽しんだ。前日・当日は糖質中心の食事をしたい。

「グリルオーツカ」のハントンライス、「麺屋大河」のみそラーメン、「近江町市場」の近江町コロッケ、ひがし茶屋街で「烏骨鶏カステラ」ってのも食べたな。どれもおいしかった。あと、夕飯にホテルの近くのスーパーで何げなく買ったアジフライ(2枚140円)食べたら、それがすんごくおいしかった。アジに味がある、って書いてみるとダジャレみたいだけど、ホントにそう感じた。


マラソン当日の朝は、ホテルの朝食バイキング。ここでは念願のB級グルメ「金沢カレー」も食べられた。濃厚なドロっとしたカレーで、すごく好みだ。泊まってたホテルは、ほぼランナーしか泊まっていなかったようで、朝食開始時間の5時半には、食堂がいっぱいだったんで、部屋で食べた。食器返しに行くと、一気に人減ってたんで、食堂でもう一杯カレー食ってきた。充填完了、フルチャージで出発だ。


会場までは徒歩で行った。宿にした「ホテルエコノ東金沢」から40分くらいだ。荷物抱えてたから、あんまり歩きたくなかったけど、ウォーミングアップになったんで、結果的にはこれでよかったかなって気する。スタートの1時間以上前に会場に到着した。

人多い。コロナのあと、このクラスの大会は、まだ復活してないと思うんで、全国に先がけて金沢から再スタートってところだろう。気候的なコンディションは抜群だ。くもりで、気温は最高でも20℃以下。前日の「何をするにも最適な日」に唯一当てはまらないのがマラソン。晴れているより、くもっていた方がいい。今日は「マラソンをするには最適な日」。ちょうどいい巡りあわせになった。


アテネオリンピック女子マラソンの金メダリスト野口みづきさんの合図でスタート。

レース前に練っていたプランは、「前半はサブ3のランナーについていく」「後半余裕あったら、少しペース上げる」ってこと。条件によっては、記録狙うの難しいかもしれないんで「金沢の風情を楽しんでいく」っていうプランBもあった。いいコンディションだったんで、「こりゃ、サブ3狙えるな」っていうモードで走りはじめる。

ウェーブ制スタートとはいえ、序盤はごちゃつく。まずサブ3のペースランナーが見つけられない。見通しのいいところで、かなり前方にいることを確認。ペース上げて追いつくことにした。序盤に金沢の市街地巡るんだけど、その辺りは本気で走ってたんで、「金沢の風情楽しむ」どころの余裕がない。やっぱりプラン通りには行かない。

5kmくらい行って、ようやくペースランナーに追いつけた。これについていくって決めてたはずなのに、そうは行かない。あっさり抜いて前に出ちゃった。

ひとつは、そこに追いつくまでにペース上げてきたんで、そのままのペースで走ったら、抜いちゃったってことがある。自然とペース上がられてたから、無理に落とすことはしなかった。もうひとつは、密集が嫌だった。集団走は単独走より物理的な負荷は少ないんだけど、精神的には気を遣う。10人以下ならそこまでストレスないけど、今回はたぶん50人くらいいたんで、かなりの圧迫感を感じる。「これなら入らないほうがいい」って判断にした。そんな経緯でレースプランは5kmの時点であっさり反故。あとはなりゆきで行こう。それがいい。

コースは、金沢駅を中心に東西南北すべてを巡る。駅周辺には何度も戻ってくる変わったつくりだ。序盤だけアップダウンがあって、あとはフラット。記録を狙うにはうれしい設計だ。

市街地から満願寺山の方へ向かう。10kmすぎで全コース中での最高到達点に達して、その後20kmくらいまでゆるやかに下っていく。ここが高速道路を走るセクション。高速道路って、周りの景色も見れないし、沿道の応援もないんで、あんまり好きじゃないんだけど、ゆるやかな下り坂となれば、話は別。身体への負荷は最小限で、ペースをキープできるんで、体力を温存できる。あとでペース見たら、そんな感触だったにもかかわらず、キロ3:50くらいで走ってる。気持ちよく走れてたんだろう。


20kmくらいで、スタート地点の方へ戻り、そのまま北上。ひがし茶屋街を抜けて、泊まった宿の辺りが中間地点だ。

25km過ぎると「田園ゾーン」に入る。「田園ゾーン」か、しんどいな。コース紹介では「遠く白山連峰の山なみを望む広々とした田園風景。疲れた身体にホッと一息つける」なんて書いてあるけど、つまりは何にもない田んぼの脇道だ。「ペースダウンしてもいいかな」っていう、フルマラソンではお馴染みのネガティブな感情が湧いてきくる。でも、なんだか今日は身体の方にまだ余裕があった。どこも痛くないし、まだ疲れてないってことが意識できると、ネガティブ感情が吹っ飛ばせる。やっぱり走行距離の積み重ねによる基礎体力の向上があったのかなって思う。そう思えると、よりがんばれる。


それから退屈をしのぐため、その辺から音楽聞いた。これも良かった。

一番気分があがったのは、ザ・クロマニヨンズの「タリホ―」。15年前の曲だからしょっちゅう聞くわけじゃないんだけど、シャッフルでたまにかかると、いつだってテンションをあげてくれる。「まぶしい陽に昇る 空へ 空へ」のところが、特に好き。自然と走りのギアがあがる感じだ。


後半は給水ポイントでの食事が凝ってくる。金沢の銘菓(和菓子が多い)やら金沢カレーなんかも出てくる。

食えない。食いたいけど食えないよ、だって息切れれてるもん。

事前の目論見では、せめて取るだけ取って、あとで食べようなんて考えもあったけど、それもできない。

こうなったら、記録達成に集中だ。


30kmを過ぎると、距離調整のために180度折り返すポイントがいくつか出てくる。そこで後ろにいるサブ3ペース集団との距離差がわかっちゃう。あれにはいつも焦らされる。「ここから引き離すのは無理だから、このリードをキープしよう」って思いで走る。精神的にはキツくてそんなにペース守れてない感じしてたけど、記録を見ると37kmくらいまで、ほぼペース落とさずキロ4:10くらいで走ってる。やっぱり基礎体力がアップしてるようだ。「よく頑張ってるね」って、ほめてもらいたいところだ。

終盤は少し日差しが出た。ちょこっと脱水気味な兆しもあって、足も腕もつりそうになる。ペースがキロ10秒くらい落ちるけど、腕降ってなんとか推進力を出す。やっぱり余裕でサブ3ってわけにはいかない。

残り1kmでゴールの陸上競技場が目に入る。ゴールが見えれば、あとは大丈夫。人の声援も増えて、パワーに変わる。

最後は競技場のトラックを走る。トラック走るのは気持ちいい。乱れていたフォームも最後だけはちゃんとする。自分なりにはかっこよくゴールラインを越えられた。


グロスタイム 2:58:35 / ネットタイム 2:58:05



自己ベストには30秒くらい届かなかったけど、十分納得できる好記録。3回目のサブ3達成だ。

3回目になるとうれしい気持ちがうすらぐか。そんなこともない。いまはいまで存分に達成感を味わっている。

たしかに初めて達成したときは、この上ないほどうれしかった。でも、その時の気持ちをずっと引きずるわけではない。

満足感はアップデートされていかないといけない。

栄光の物語も、苦労話も、面白エピソードも、取るに足らない愚痴ですら、昔のものよりは最新のものがいい。自分の周りを見ても、昔の話ばかりしている人は魅力的じゃない。

作家でも、ミュージシャンでも、映画監督でも、すでに亡くなったクリエイターを好きになると、新作が出ない寂しさがある。過去の遺産を食い尽くしていくだけってのは、寂しいもんだ。生きていれば、新たなものが生み出される。それと同じように、大会に出続けていれば、新たな感情が生まれる。それが結果的にいいものであれ、悪いものであれ、新しいものに出会えるワクワク感は、確実に味わえる。たぶんこれから記録を飛躍的に伸ばしていくのは難しいんだろうとは思ってるけど、仮に落ちていくとしても、それを見て楽しめればいい。

ていうか、しばらくは落ちるつもりはない。まだ伸ばせるところまで伸ばしていきたい。


最後にレース後、金沢で食べたごはんの話。

「もりもり寿し 金沢駅前店」ていう寿司屋にした。せっかく日本海側の名所に来たのに、海の幸を味わってなかったんで、最後にそれを堪能した。金沢フォーラスっていう商業施設にある人気店。回転寿司ってところが、そそる。マラソン終わりでも気軽に入れるところだ。とは言え、ものすごい待ち人数で、20組以上待つことになった。ただ、それほど腹減ってなかったし、予約してた新幹線まで時間あるし、休息できるし、むしろいい待ち時間だった。1時間以上待ってようやく入店。さすがにその頃には腹も減ってる。店員さんがマラソンの荷物見て、「お疲れ様でしたね〜。」なんて声かけてくれて癒された。

そして寿司はもちろんウマい。季節のおすすめの真鯛とノドグロにまず掴まれる。マグロ5貫盛で早くも絶頂に達した。疲労回復にいい、アナゴは絶品。最後にその流れでウナギの握りまで食べられた。いうことないくらいの満腹感だ。最後にいい贅沢ができた。



泊まりがけの遠征では初めてサブ3を出せた。それもシーズンはじめの大会で、達成できたんで、これからの遠征大会をより楽しめる感じがする。この後、年内に2回出場予定だから、まずは「楽しむ」ことを優先して気楽に臨んでいこう。

 
 
 

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