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200215-16 高知

  • 執筆者の写真: 光太郎 笠原
    光太郎 笠原
  • 2020年3月15日
  • 読了時間: 10分

2ヶ月続けての遠征フルマラソン。「高知龍馬マラソン」に参加してきた。初の雨中のフルマラソンでもあった。


2020/02/15

前泊で高知入り。羽田からの空路だ。10時前には高知に着き、そっから市内へ移動。1月の鹿児島旅行では、前日に色々散策し過ぎて、やや疲れが残るまま当日迎えたっていう反省があった。今回は控えめにしておこうとは思ったけど、そこは龍馬のふるさと土佐藩高知、見ておきたいところは山ほどあって、控えめって訳にもいかなかった。はりまや橋を起点に東西南北、歩き回っちゃった。午前中は、高知城に上って、「ひろめ市場」では、海の幸を味わった。午後は、桂浜まで足を伸ばして、龍馬像を眺め、記念館で歴史的な資料も見学。最後は太平洋をのぞむ高台から、龍馬も見たという眺望を目にして、心震えた。確かに歩き過ぎた感はあるけれど、決して疎かにはできない散策だったから悔いはない。むしろ高知に来た実感を持てたし、前日にして早くも「来て良かった」感を高められた。

前泊の宿は「ザ・クラウンパレス新阪急高知」。結婚式場なんかもある、わりと立派なホテル。ここはマラソンのスタート地点である高知県庁前から歩いて1分ほどのところ。マラソン参加者向けのプランで予約していた。夕食は「マラソン前日に食べておきたいメニュー」とのことだったけど、これはまあいまいち。ただ、当日朝のバイキングは、種類も多くて、すごくいいものだったから文句はない。設備も整ってて、いいホテルだった。


2020/02/16

朝6時前に起き、朝食バイキングで腹も満たした。部屋に戻る頃の時間がちょうど日の出くらい。カーテン開けて外の様子を見てみると、予報通り本降りの雨だ。「やっぱりか」って気持ちにはなったけど、これで覚悟は決まった。スタート地点が目の前ってこともあったし、荷物もホテルで預かってくれるってことでもあったから、できるだけホテルの中で時間過ごしてから、会場に向かうことにした。レース前は「竜馬がゆく」を読み返していた。ちょうど薩長同盟のくだりのところが読めた。あそこは何度読んでも感動する。そこを読み終えたあたりで、レース前1時間くらいになってたんで、キリをつけてホテル出る準備した。いいテンションでの出立だ。改めて外に出ると、雨は思ったよりは弱く、気温はそこまで低くない。半ソデTシャツ一枚で問題なさそうだ。県庁前の大通りにすでにランナーは並んでて、自分はスタート地点から遡って移動し、Aブロックのところに合流。いい位置からスタートできる。TVの取材が多い印象。自分の前の人も後ろの人も、スタート前にインタビュー受けてた。スタート10分前くらい、雨が一時的にやんで、気持ちも昂り、悪くない気分で号砲迎えられた。

雨はスタートしてからすぐに本降りに逆戻り。結局、ゴールするまで振りっぱなしだった。これまでのフルマラソンでは、途中での雨すらほぼ経験なかったんで、いきなりの不良馬場経験で、タフなレースだ。それ以外にもタフな条件は揃った。今回もスマホをポケットに入れて走るんだけど、雨対策でチャック付きのポリ袋を二重にしてその中に収納。イヤホンは持参せず。そんな訳でスマホでペースも確認できない。気を紛らわす音楽もなし。自分にとっては精神力を試される試練のレースだ。

まず雨中のランのこと。常にぬれる状況とはいえ、びしょ濡れか、そうでないかで、だいぶ感じが違う。深いぬかるみに入ると、一気に靴下まで浸水して足元が重くなる。ここを避けられるかどうかは意外と重要だった。上半身のぬれ方は避けようもない。徐々に服が重くなっていく。体が熱くならないのはいいけど、手先はどんどん冷えていく感じだ。前のランナーがあげる水しぶきも気になる。基本的には風除けで、後ろを追走するのがいいんだけど、真後ろは水かかるんで、斜め後ろくらいでついていくのがちょうどいい。走ってみてわかることが色々あるもんだ。心強かったのは、前の週に磯貝さんから誕生日プレゼントでもらった「North Face」のランニング用キャップ。すごくよくフィットしていた。雨にぬれても形崩れなくて、いい雨よけになってくれた。レース後には早速お礼のメッセージ送った。とても感謝してる。

調子自体はすごく良かった。この悪コンディションにもかかわらず、前半は5km20分台そこそこのペースで走っていけてる。沿道の応援がすごく良かった。この大会の特徴は絶え間なく人がいるってところで、それがすごく力を与えてくれた。あと全員のゼッケンに所属地が印字されてて、自分は「東京都」って表記されてた。それを見てくれてて「東京からありがとう!」って声をかけてくれた。そう、この「ありがとう」って声が多いのも良かった。普通の大会で多いのはもちろん、「がんばれ」なんだけど、高知の人たちは「ありがとう」って声をかけてくれる。それは大通り沿いの道よりは、農道みたいな小さい道にいる、おばあちゃんたちからが多かった気がする。この寒い中、傘までさして外で待っててくれるんだから、こちらこそ「ありがとう」なんだけど、逆にその言葉をもらえるっていうのがすごく心に残った。「はるばる高知まで来てくれて」っていう気持ちが伝わってきてた。四国は全国から来るお遍路さんたちに、「おもてなし」で迎える文化があるって聞くけど、そんな片鱗を見れたようでとても印象的だ。

10km・15km・20kmのラップは順調。20kmすぎにこのコース一番の難所、桂浜の浦戸大橋の勾配がある。1km弱で標高で50mを一気にかけあがるところ。単独の勾配としては自分史上最大の坂だったと思う。ペース落として走ったけど、息が切れてしょうがなかった。この時ばかりは雨降ってて幸い。汗を洗い流してくれた。あの自然のシャワーがなければ、顔も体も汗ぐっしょりで大変だったろう。そこを越えると一気の下り坂。龍馬のコスプレした金哲彦さんもそこで応援してた。自分のゼッケンNoも呼んでくれて、「1112番、がんばれー!」って言ってくれた。そして、目の前に広がる桂浜の眺望。曇天の中でも太平洋の眺めは、とても素晴らしい。このコースづくりの妙はこういうところにあるんだろう。難所を抜けた後の、絶景はとても印象に残る。多分あの光景はこれからもずっと脳裏に焼き付いているんだろう。

中間点も無事に過ぎて、その後は「花街道」っていう海岸線沿いの道をひたすら走って、距離を稼ぐセクション。ハーフまでで、1時間28分台。悪くないペース。相変わらず、調子も良かったし、いい記録出せそうな感覚もあった。ただ結論から言えば、こっから先の気迫が足りなかった。いや、「気魄」もしくは「鬼魄」っていう感じの方がいいかもしれない。初めてサブ3を出した時ほどの「何がなんでも」感が出せなかった。

スタートしてからしばらくすると、同じペースで走る集団ができる。ずっとのその集団の中で走ってたんだけど、集団の先頭に立って、しばらく走ってたら「ああ、もうこのペースやめたい」って気持ちが見え隠れしてきた。25kmまではそれでもなんとか近くにいたけど、一度ペース緩めたらあっという間に置いていかれた。その時点でスタミナ切れてたわけではないから、完全に精神的な弱さだろう。ただ正直、集団から遅れて、意識することがなくなったおかげで、だいぶ精神的にはラクになった。27~28kmの地点では、「もう走るのやめちゃおうかな」とさえ思ってたけど、ペース落としたことで、そんな弱気さは払拭。30km過ぎでは、「これなら今日もゴールまで走りきれる」って自信を取り戻した。この数km間でのメンタルの動きは、まさにフルマラソンの真髄。フィジカルがあっても、メンタルが伴わなければ、いい記録は出せないってことが一つ。そして、ネガティブになった後でも、ポジティブな気持ちを持ち直せさえすれば、一気に崩れることなく進めるってことも同時に実感できた。いい経験だ。

花街道での折り返しを過ぎ、仁淀川のあたりでサブ3のペースランナーに抜かれた。そこで着いていくことができなかったんで、完全に記録的な目標は失って、あとはマイペースでのラン。正直モチベーションを保つのが難しい状況だったけど、「最後まで走りぬく」っていうことで、なんとか残りの道のりを進み続けた。ゴール地点に向かって北上する最後の4kmは、完全なる農道。そこにも地元の人たちがいて、より家庭的な応援をしてくれる。ここでも「ありがとう」の声は聞こえるし、それに加えて「おかえり」って声もかけてくれる。すごく心を打たれた。自分も手を振るだけじゃなくて、声に出して「ありがとう」って応えながら走ってた。ああいう経験は初めてだ。最後の1kmは浦戸大橋に匹敵するくらいの急坂。「ラストにこんな坂、設定するなよ」ってグチの一つもこぼしたくなるような、厳しい勾配だ。ここでくじける訳にはいかないんで、ペース落としながらも。なんとか走って上りきり、ゴールの春野陸上競技場に入った。最後にトラックを一周。場内のビジョンでは、ゴールラインの様子が大写しになってて、自分の姿が確認できる。単独でゴールラインを越えられて、場内アナウンスでは「東京からお越しの、笠原光太郎さん、今ゴールです」ってコールしてもらえた。それは初めての経験、集団でのゴールだったら、単独コールはなかっただろう。うれしい瞬間だった。タイムは3時間7分台。セカンドベストとほぼ同タイム。十分誇れる記録になったと思う。

当初の見込みでは、ゴールする頃には雨あがってて、気温も高いはずだった。実際には、雨は降ってて、気温も低いまま。荷物預けてなかったし、スタート・ゴールが違う場所なんで、びしょぬれの状態で、体を温めるものが何もないっていう状況。ゴール地点で楽しむ余裕はなく、「一刻も早くホテルへ帰ろう」としか考えられなかった。無料配布のシャモ鍋と、じゃこ天だけもらって、すぐにホテルへ向かった。そっからの時間は結構キツかった。シャトルバスまで20分くらい歩かされるし、バスでも発進までしばらく待たされる。ホテルの目の前に着いた時には、体が冷え切ってて、寒さで震えるくらいだった。逆にホテルついた後のおもてなしは身にしみた。宿泊プランで、レース後にお風呂に入れるサービスがついてたんで、それ使って念願の大浴場へ。間違いなくこれまでの人生で最高の入浴体験だった。精神的にも肉体的にも、あんなに気持ちいい入浴は記憶がない。湯船浸かって、目一杯体をリラックスさせて、全身から疲れが抜けていく様子を体感できた。本当に気持ちよかった。風呂上がりにはレストルームで、参加賞の「ぼうしパン」を食べつつ、お茶飲んだ。ここで随分回復させてもらえた感じだ。帰り際にはスタッフの人にマラソンのことをねぎらわれつつ、しばらく会話。「走った後とは思えないほど、けろっとしてますね」なんて言われた。いやいや、いまだいぶ回復した感じなんです。飛行機の時間まではまだしばらくあったんで、食事と買い物しようと、「ひろめ市場」へ向かった。「高知龍馬マラソン」のポリ袋かかえて場内を歩き回ってたら、いろんなお店の人、おもに年配のおばちゃんから声かけられた。「お疲れ様だったね」とか「頑張ったねえ」とかそんな感じだ。コースとか会場でこういう声をもらうことはあるけど、レースのあと街に居ても声かけられるのはあまり経験がない。「今日は雨で大変だったろうけど、また来年も来てね」なんて言われつつ試供品のお菓子くれる。そういううれしいやりとりがあると、「また来よう」って思うもんだ。やっぱり旅ランはいい。

夕方の便で東京に戻り、家には19時前に着いた。レースの後、気持ちよく過ごせたこともあってか、そんなに疲れはない。その日のうちにびしょびしょになった衣類と靴はクリーニングもできた。遠征して雨に濡れるとメンドーなんだってことは、とてもよく実感できた。

旅ランは色々得るところがある。こういう経験を重ねていくことは、必ず自分にとっていい経験になるんだろうっていう実感がある。それは、マラソンという競技の上での経験だけじゃなくて、人生としての経験としてだ。何より、楽しい思い出が一つずつ増えていくっていうところがいい。これからもどんどん経験重ねていこうって思ってる。


第8回高知竜馬マラソン 距離42.195km 時間3:07:54 197位/10,196人中


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