200111-12 鹿児島
- 光太郎 笠原

- 2020年3月15日
- 読了時間: 9分
更新日:2020年8月1日
2020年の初レースにして、初めての本格的な遠征フルマラソン。「いぶすき菜の花マラソン」だ。
前泊だ。しかもかなり早めの鹿児島入り。せっかく薩摩国に来たんだから、歴史探訪はしておきたいところ。空港から鹿児島中央駅にバスで移動。駅を起点にして、歩いて行ける範囲に、維新の功労者たち生誕の地があり、「維新ふるさと館」ていう施設もある。その辺は一通り回ってきた。西郷・大久保・大山・東郷、この辺の人たちがホントに狭い範囲内に暮らしてたってのがわかる。その後は、城山展望台にも行った。普通は車で行くようなところ。徒歩で行くと結構な山登りになる。おまけに重い荷物を抱えた状態。マラソン前日にしては、かなり負担を強いられる道のりだ。その分、展望台についた後眺めた桜島はとっても素晴らしかった。登って損はない。食に関しても、かなり満足いく物が摂れた。鹿児島豚トロラーメン、「天文館むぢゃき」の元祖しろくま、「あぢもり」の豚しゃぶ。どれもこれもうまかった。レース前の食事として、栄養面でどうかってことは疑問だろう。ただ間違いなく気持ちとしては満たされてた。一日歩き回ったんで、ちょっとは疲労感もあるけど、走った後よりはマシ。早めに寝れば、疲れもとれて、万全でレースに臨めるだろう。

当日。朝3時台に起きて、4時台前半にチェックアウト。タクシーで宿から鹿児島中央駅へ向かう。タクシードライバーが話しやすい人、行きがてらいろんな会話した。「今日が一年で一番指宿が賑やかな日ですね」だって。天候は雨だった。当然夜明け前で真っ暗。なんだかテンションあがらぬまま会場行きのリムジンバスに乗った。
タクシードライバーの話では「1時間半はかかる」ってことだったけど、実際には1時間ちょいで着けた。「菜の花マラソン」の横断幕が見えてようやくやる気も起きてくる。雨の中、屋外でレースまで待つのはしんどいなって思ってたけど、受付した体育館が荷物置き場になってて、そこにずっといられる。まだ時間が早かったこともあって、席はガラガラ。2階のギャラリー席のとこに場所取れたんで、ゆったりレース前の時間を過ごせた。3時間近く主に読書してた。「現地嫌いなフィールド言語学者、かく語りき。」っていう本。なかなか楽しかった。内容としても、フィールド言語学者として、世界中で取材調査する自分と同年代の男性の話。今の自分に思い合わせて、感慨深い気持ちがあった。旅は楽しいし、自分を成長させてくれる。レース30分前くらいのところで、体育館を出てスタート地点へ向かう。ようやく日が昇ってた。鹿児島の朝は東京より30分くらい遅いみたいだ。それに合わせて雨も上がってたんで、ようやくフルマラソンを走るテンションになってきた。
スタート地点は直線の道路。ここに申告タイム順に並んでいく。自分はサブ3で申告してた。この大会はファンランが多いこともあって、そのレーンで申告する人がめっちゃ少ない。最後尾のレーンから歩いてきて、数百メートルは前まで進む。結局最前レーンまで来ることになり、前から10列目以内のとこからスタート切れることになった。スタート台には瀬古利彦、ゲストランナーには川内優輝、どっちも間近で見れて、スピーチしているところが直に見れる。瀬古さんの話はすごくユーモアもあって楽しかった。「今日日本新が出れば、私の権限で東京オリンピックの代表に選びます。絶対に出ませんけど。」なんて。
後ろには12,000人近くのランナーがいる。確かに今の自分の持ちタイムを順位で見ると、この辺の位置で間違いないんだけど、物理的に後に控える人の多さを見ると、「こんなに上位なんだ!」っていうことが、視覚的にわかる。それが実感できて、引き締まる思いだった。
雨やんで、雲は依然厚いままだから日差しなし。気温は10度程度で寒くなし。気象条件はすごくいい。コースとしては、相当キツいコース。特に前半は厳しい。はじめの10kmで標高差100mを一気に駆け登る。その後、一気に降って、中盤以降もアップダウンが繰り返される。事前の読みでは、「はじめの10kmを乗り切れば、後半は楽になるんでなんとかなる」ってところだったけど、実際にはそんなことはない。だってフルマラソンだもん。
スタートして3kmくらいで最初の上りがはじまる。いろんなパターンで坂が出てくる感じ。急坂・ダラダラ坂・U字坂・くねくね曲がる坂・真っ直ぐ伸びる坂…、どんな坂でもラクってことはない。まだ序盤なんで、すでにギブってことはないけど、「こりゃ確かにキツいコースだな」って実感する。坂を登りきるたびに息が切れて、汗が噴き出す。抑えてたとはいえ、「後半まで持つか」ってことが、まず心配になる。
そんな中、心に残った応援は、10km過ぎの民家の前。そこの家に住んでいると思しき少年がエレクトーンで「負けないで」を生演奏してた。自分が通りがかった時はちょうど曲のブリッジ部分。そこで、オリジナルアレンジを入れて、カッコよく弾いてた。すごく印象的で嬉しかった。他にもこの「生演奏」スタイルの応援が、とても多い大会だった気がする。みんな延々と演奏するだろうから、大変だろうに。ありがたいもんだ。
登り坂が一旦終わって、池田湖に出たところで一気に気分が晴れる。長々と続く下り坂。池田湖はとても見晴らしがいい。なにより一面の菜の花畑!さすが大会の冠になるほどの景観だ。菜の花はその後もいろんなところで咲いてて、心をなごませてくれた。20kmまではほぼずっと下りが続く。ところどころ思い出したように上りが出てくるんで、それが結構こたえる。これはレース全般を通して言えることだけれど、平坦なところがほぼない、っていうのがこのコースの特徴。上りと下りで完全に走り方を変えるんで、その切り替えが割と大変だ。上りは、小股で足元を見ながら走る。下りは、ブレーキかけずに大股で傾斜に身を委ねて走る。これを最後まで通して走った。自分にとっては、この意識での走りが、比較的体にこたえない坂の攻略法。今後もこれで行こうと思う。
22km過ぎてフラワーパークっていうところに出る。そこを過ぎると再び長い坂。この辺は家畜と堆肥のニオイがかなり強くて、それが気になっちゃってた。逆に疲労に意識がいかなかったのはよかったのかもしれないけど。私設エイドの充実がこの大会の特徴とのこと。確かに応援とおもてなしはすごく助けになった。26km過ぎには、資材置き場みたいなところに大きなエイドがあって賑わってた。執拗に渡そうとしてくれる元気なおばちゃん居たんで、自分も苦笑しながらひとついただいた。今回の規約で、イヤホン禁止だったんで、まったく音楽は聞かずに走ってた。そうするといつもより応援がよく耳に入る。普段から応援には応えようと思って走ってるけど、今回はより自然に手を振ったりできた。そうすると自分のテンションもあがって、相乗効果で力になるもんだ。タイムはまったく見なかった。そして途中で電光掲示板なんかもないんで、記録は気にせず、目に入るエイドには立ち止まることができる。印象に残ってるのは、補給食のサツマイモ。やっぱり鹿児島の名産だ。おいしいし、パワーが出る感じもする。個人的な意見としては、長距離走るときの栄養補給にはぴったりな気がしてる。ただ、レース中よりはレース前の方がいいかも。走ってる時は口がパサパサになるからね。
さて30kmまで来た。そこまでのアップダウンが相当疲労としてたまってきてたけど、その辺りは下り坂、なんとかペース落とさずに進める。実感として、前回の湘南国際に比べてかなり遅いペースのはずだけど、周りのランナーの密度は同じくらい少ない。多分他のみんなもここに来るまでにスタミナ消費しちゃってるんだろう。山川港っていう港に出て、そこで潮風あびながら走る。それは気持ちいいし、元気もわく。
ただその後の36km手前くらいから最後の長い坂が待ち受ける。事前にそこに坂があるってことは調べてたし、見通しの良いところなんで、数百m手前から勾配が見えてくる。それがなんともテンションの下がる思いで、正に最後の難関っていう感じだ。実際に坂を登り始めると、案の定、足が突っ張ってくる。疲労の極みだ。吊る寸前ていう感覚がある。慎重に走り、「ヤバいかな」って感じると、一度止まって足を伸ばす。吊ったらおしまい。もう元のペースでは走れないんで、とにかく細心の注意を払いながら進んでた。精神的にも肉体的にもここが一番しんどいところ。それでもなんとか坂を登りきって、文字通り峠は越えられた。
指宿の市街地へ入り、ようやくここでこのレース初めてと言っていいくらいの長い平坦な道になる。趣のある温泉街を走っていく。残り3kmを過ぎると、その時点での余力から算段して「これならゴールできる」っていう目算が立ち、安堵感を覚える。それでもラクとは言えない。「もう二度と指宿なんか走るか」っていう気持ちをふつふつと感じ、不貞腐れながら走ってた。それくらいキツいコースだ。
最後はスタート地点を過ぎて、陸上競技場に戻り、無事ゴールを迎えた。3:18:12のネットタイム。順位は195/12,853。前回はサブ3でこのくらいの順位だったから、このコースで記録狙うのはホントに難しいってことだろう。その中ではまずまずよく走れたかなとは思ってる。今までのフルマラソンの中では、間違いなく一番タフなコースだった。トレーニングという意味では、すごくよかったし、それなりの記録で乗り切ったんで、いい経験にもなった。そして終わった後の消耗が案外激しくなかったのもありがたかった。なんせこの後、長い移動が控えてるし。自分の体力に感謝だ。
会場で食事した。無料で配布してたのが、おにぎり、そば、ぜんざい、そしてここでもサツマイモ。もちろん全部ありがたくいただいた。屋台で肉系のお惣菜も買って、おかずにした。鹿児島は豚も鶏も美味しい。いいところだ。会場を後にして、指宿駅へバスで移動。駅前の広場に無料で入れる足湯がある。バスの待ち時間、ここに入ってたんだけど、まあこれがすごくいい。浸かってるのは足だけなんだけど、全身から疲労が抜けていく感覚があった。フルのあとの足湯ってこんなにも気持ちいいのか。10分くらい入って、その後30分以上は気持ち良さが残ってた。当然、空港までの移動中のバスでは、爆睡。2時間もバス乗ってんのつらいな、なんて思ってたけど、あっという間だ。空港でも出発まで時間の余裕あったんで、レストランで黒豚のロースカツ定食食べながら、日記書いたりして、有意義に過ごせた。飛行機も順調にフライト。フルのあと、すごく長い移動時間をかけて家に戻るんで、心配してたけど、案外体力的には問題なかったのは嬉しい誤算だ。
初めて飛行機遠征してのフルマラソン参加、割と順調に行けたし、十分楽しめる旅行になった。この後続けてこのパターンでの旅行ランがあるけど、そこも大丈夫だろうなって自信持てたし、楽しんでいけそうな確信がある。
第39回いぶすき菜の花マラソン 距離42.195km 時間3:18:12 195位/12,853人中




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